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就労支援に関する社会課題をITスタートアップと解決するには(1/4)

Code for Japan の関です。私は神戸市のチーフ・イノベーション・オフィサーとして神戸市のスタートアップ連携に関する企画やお手伝いも行ってきました。その中でこだわってきたのが、ソーシャルスタートアップとの連携です。行政がアクセラレーションプログラムを行う以上、一般のVCやアクセラレーターができるようなものではなく、社会課題を解決したいと思っている人たちに機会を与え、ともに社会課題を考えるコミュニティを作るべきだと思っているからです。

就労者支援を行っている神戸のスタートアップ、株式会社Compassも、そういったスタートアップの一つです。先日(2021年2月4日)、コロナ禍の就労支援という課題についてできること、及び自治体とスタートアップが共創を行う上で、双方が考えるべきことを皆様に共有することは価値があるだろうということでイベントを開催しました。その時のログをUDトークで文字起こしをしましたので、公開させていただきます。(言葉の言い回しを、本意がずれない程度に若干わかりやすく修正したり省略しています。)

1時間半に渡るイベントでしたので、4回に分けてご紹介します。

ちなみに、こちらに動画もございます。

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Code for Japan 関(以下、関) こんばんは!始めます。
「就労支援に関する課題、社会課題をITスタートアップと解決というタイトルです」

Compass 大津(以下、大津) よろしくお願いします。
神戸市 中沢(以下、中沢) よろしくお願いします。

 今徐々に見ている人増えていってますね。皆さんよろしくお願いします。お越しいただいてありがとうございます。

まず私がですね、Code for Japanのの活動をしております関と言います。よろしくお願いします。

大津 株式会社コンパスのCEO大津です。私達は、「日本のワーキングプアーを無くそう」というミッションに沿って活動している神戸発のスタートアップです。
LINEのチャットボットを軸にして、オンラインで無料のキャリアカウンセリングを提供したり、その先にキャリアAIを提供したりだとか、色々な人材サービスを通して…労働関係を良くしよう!と取り組んでいるベンチャーです。よろしくお願いします。

中沢 神戸市役所中沢と申します。関さん大津さんに大変お世話になっています。神戸市の職員でございます。神戸市では、新興企業やスタートアップの支援を積極的にやっておりますので皆様何かあればお声掛けください。

コロナ禍での就労支援の課題

関 まず、今日のテーマについて確認しておきたいんですけれども、「就労支援、× ITスタートアップ」ということですよね。

今大津さんが言っていただいたように、まさにスタートアップとして就労支援に関する課題を解決するということをしていただいています。
今コロナで就労支援がすごく重要になってきてると思います。職を失った方も増えていますし、課題が大きく発生したときって、弱いところに負荷が掛かって、もともとあった課題も噴出してしまうことになってしまうのかなと思っています。

その解決方法として、もちろん従来型の仕組みも必要ですけども、ITスタートアップという、新しい業態や考え方というのは適用できる部分も結構あるのかなというところで、今日この場を設けています。あとは、スタートアップと自治体って結構付き合うの大変だよねっていうところもありますので、神戸市として結構いろんなチャレンジをしてきているところもあってですね、どうやったらうまくお互いウィン−ウィンになれるかみたいなところも掘り下げていきたいかなというふう思ってこの時間を設けさせていただきました。

まず大津さんの方から、そもそもどういう課題に対してどんなアプローチで、活動してるかっていうのを簡単に紹介してもらってもいいですか。

年収500万円以下をターゲットとした就労支援

大津 私達はですね、年収500万円以下の方を対象にしていて、相談をベースに、相談でわかった、知り得たデータを元に人材の紹介をやっていくというエージェントをやっています。

大きく三つの活動があって、一つは相談。国家資格を持ったキャリアコンサルタントのプラットフォームを作って、それを利用しながら皆さんにキャリアカウンセリングを受けていただきながら、ベストなキャリアの道っていうのを一緒に探していこうというサービスを提供しています。もう一つはテクノロジーで、LINEのチャットボットやAIを使い、コストを少なくしながら今まで年収500万円の方々というよりはアッパー層に向けられてきたネットサービスを、全ての人たちが受けられるように取り組んでいます。
もう一つ最後に、人材の紹介をするときにそういったデータや相談でのノウハウを利用しながらミスマッチを防いでいて、日本からワーキングプアをなくすために少しでもお役に立てたらなぁというこの三つの仕組みになっています。

関 そもそもどうしてそういうことを始めたんですか?

大津 私は前職がNPOなんですけれども、そこでどちらかと言えば未就業の方々の相談に乗ったりですとか、就職先を探すようなマッチングだったりですとか、そういった事業に携わらせていだいていました。そこで気づいたのはやっぱりなかなか公共のそういった窓口に結びつく方ってすごく少ないということです。

なんか数パーセントもいないというところにぶつかって、行政の仕組みでは周知して皆さんに身近に感じていただくことっていうのがなかなかできない、その分手厚かったりですとか…いろんな悩みに対応できるっていうメリットはありつつも、なかなか皆さんの「気軽に無料で」お使いいただくような、相談サービスが無いなっていうところに気づいたっていうのが一つ。
もう一つはやっぱりハローワークとかもそうですし、市役所区役所とかもそうなんですけども、そういった施設は割と身近なところになくて、結構足を運ばないといけない。

それは実際失業したりですとか、時間ができてきたりすると可能なのかもしれないんですけれども、働きながらそういったサービスを受けることはなかなかできない、そういった情報を得ることができないっていうところがやっぱりすごい大きいネックというか、課題じゃないかなというふうに思いました。それならオンライン上に、Web上にそういった入り口を作ったり受けられるようなサービスはないかなと、そういうのを作りたいなと思ったのがきっかけです。

 なるほど。手厚いんだけれども、人による対応が中心になるので、なかなか気軽さがないし、あとは時間的な制約でアクセスできない。確かに、ワーキングプアなので働くのに忙しいわけですよね。

大津 そうなんですよね。支援する側も、働いている人よりも働けない人とか、まだ働いていない状態の人の優先順位が上がるんですね。そういった支援の窓口とか施設だと、お仕事をしている人とか学びに行ってる人とか、今現状ではやることがあるけれどもその次のステップアップがなかなか難しい方に対してまでは、サービス提供が難しいっていうところがあって、優先順位がどうしても下がってしまう。

実際そのまま本当にキャリアアップしながら前向きに希望を持って働き続けられる人が、どれくらいいるのか。みんな働いている人がそうなのかっていうと…そうではないと思う。
実際はコロナの影響もあってもっともっと深刻になっていると思うんですが、その部分をケアするっていう、官、民両方なんですけども、なかなかそこはないなぁと。そういったところに転職したいなと思ったんですけどなかなかやっぱりないんですよね。

なのでそれだったら作ろうかというふうになってます。

関 無いから作ろうという発想がすごいですよね。

大津 そうですね、ちょっとおかしいですね(笑)

(トラブルで入れていなかったマネックスベンチャーズ和田さんが登場)

関 ありがとうございます。和田さん(入れて)よかったです。

和田 はいすいません。何とか入れました。

関 聞いている皆さんのために自己紹介をお願いしてもいいですか?

和田 マネックスベンチャーズの和田と申します。よろしくお願いします。
今日登壇されている大津さんが経営されてるコンパスという会社にも出資をさせていただいています。よろしくお願いします。

なぜ神戸市はスタートアップを選んだのか?

 よろしくお願いします。というわけで、今日はこの4者、中沢さんは神戸市職員として働いており、大津さんはスタートアップで、和田さんがそれに投資をしているという図式で、いろいろお話を展開していきたいと思います。
先ほどコロナで結構大変っていうことを大津さんから聞きましたけれども、中沢さんの方で、行政側としてどうして大津さんと一緒にやろうということになったかとか、今のその対応状況とか、何か補足があればお聞きしたいです。

中沢 わかりました。まず神戸市新産業課のスタンスと神戸市のスタンスと二つあると思うのでそれぞれご説明させていただきたいと思います。私自身は新産業課というところでスタートアップのご支援を行ってきました。コンパスさんは、実はその中の一社でございます。
我々神戸市は人口減少という大きな課題を抱えていますので、若い方々が積極的に活躍できるような、そんな職場とか機会作りを積極的にしています。そうしたときにやはりスタートアップを支援するというのは避けては通れない、必ずすべきこというふうに考えていますので、その中の一つとしてコンパスもずっと支援しているというところがございます。

一方で、神戸市に目を向けると、今特にコロナの状況もあり更に厳しくなってますけれども、やはり全国で同じように就職氷河期世代の方々がキャリアの形成に困難を抱えているというところがございます。
であれば、今我々が支援してきたスタートアップであるコンパスの技術と想いと、それを解決するするための課題ですね、就職氷河期というところをマッチングさせて何か面白いことができたらいいなってことを考えておりました。

一応行政職員なんではっきり言っておくと、我々コンパスさんが最適な提案をしてくれたら嬉しいなとは思いつつも、課題としては公募をさせていただいて、いろいろな事業者から提案いただいて、結果コンパスさんが選定されてというところがございますので、その点は補足させていただきたいと思います。以上です。

関 もともと神戸市はスタートアップ支援をやっている中での関係性というのがあったのに加え、今回は公募の内容と大津さんがやっているサービスがたまたま合ったというところになるわけですね。ありがとうございます。
どういうことを具体的にやっているか、大津さんの方からサービスの説明をしてもらっていいでしょうか。

チャットボットとAIによる就労支援

大津 神戸市さんが実際に導入していただいているプロダクトというか、サービスの説明を(ちょっと全部お見せできないんですけど)少し見せていこうかなというふうに思います。

神戸市の公募が出たときに、これは私達が得意とするLINEのアプリケーションだったりとか、チャレンジしようとしているAIのマッチングであればすごくインパクト出るんじゃないかなというふうに思ったのが最初のきっかけです。背景としては、今回の神戸市さんに提供しているものはそもそも就職氷河期世代の影響を受けた世代の方々向けにご提案をさせていただいたものです。
そこでコロナの感染拡大というところで深刻な状況になってきたので、コロナの影響を受けた方々向けには年齢制限を設けずにやろうというふうになっています。
そもそもの背景としては、就職氷河期の方々、影響を受けた市内の方々に対して、十分な支援、キャリアに対する支援とかの情報を届けられていないよねっていうところを一緒に解決していこうというところでご提案させていただいています。

求職者にももちろんいろいろな悩みがあって、各世代でいろいろあるかと思うんですけども、特に就職氷河期の方々っていうのは、学校を卒業したときからあまり平等じゃない条件の中、就職活動をしなければならなかった。
そこでしばらくそういった一番大切な、と言ったらあれですが20代の時期を本来望まない形でのキャリアを持って過ごしている。
そういった方々には、そのお仕事の経験上の話だけではなくていろいろな課題というか悩みがある。それに関して対応したいんだけれども専用の相談窓口とか連絡先っていうのが、なかなか周知されていなくて、あるのはあるのですが、やっぱりわかりにくいなと。

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それに加え、「自分が就職氷河期なのか?」とか、「そういったサービスの対象者に該当するのか」といったところや、自己責任論のようなところで…一定の心理的なハードルっていうのが存在するなという部分が、私たちもそのユーザーさんとお話する中でわかってきた。

わかりやすくて、氷河期世代の方々に受け入れられてもらえるようなサービスを作りたいなというふうに考えたところが背景として強いです。
また、大きな問題として、その企業は地域に根ざした人材を探している。地方は特に、神戸もそうなんですけれども、東京以外の地域はやっぱり通えるエリアで頑張ってくれる人材を求めている一方、例えばブランクがあるとか就職氷河期だからの経歴、という部分に知識がなかなかなかったりですとかで、書類だけでは良い人を見抜くことができず、マッチする人材を自分たち自身で探すこと自体がすごく難しい。

もちろんハローワークさんはあるんですけれども、たくさんの数の方々が応募し、たくさんの求人の中で埋もれてしまいがちで、なかなかその地方に特化したいい人材を押さえることができないっていう課題がありました。
そこで私はAIの活用やLINE相談を用いて、身近にかつ手軽にそういった就職氷河期世代だったり新型コロナウイルスの影響を受けた方々へ就業転職に繋がる機会、入り口をですね、大きく作って知ってもらおうというふうな提案をさせていただいてます。

ここまでがサービスの大きい説明になるんですけども、神戸市さんとはSODAMOっていう、(相談+モバイルの略です)サービスを作らせていただいてます。入口はLINEのチャットボットになっています。
友達登録をするだけで、どなたでも気軽に無料で国家資格のキャリアコンサルタントの相談を受けることができるというようなプラットフォームの仕組みです。

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その先に神戸市さんの場合はAIを開発させていただきまして、このAIの中で40個の質問に答えていただきますと、独自の分析AIによって合った仕事というのが1日3社ほど表示されるというような内容です。
毎日3社しか見れないので。それが自分にフィットしてたらいいねとか、私はあんまりだなとかっていうのをジャッジしていただいてそれによってまたさらにAIが賢くなっていくというような仕組みになっています。

 なるほど、この会社ちょっと違うなと思ったら、ノーってやっていくと、それを学習して、次はもっといいのを提案してくれるみたいな。

大津 そうなんですよ。

関 もうそれは実際にサービスインして使われているっていう状況ですか?

大津 はいそうです。

関 いつぐらいからSODAMOはやってるんですかね。

大津 AIの機能は去年の12月にリリースしています。相談のカウンセリングチャットボットのところは9月でした。少し早くスタートしています。

関 実際どうですか?やってみて。

大津 思ったより反響あるなと思ってます。もうちょっと…オンライン上で相談することに抵抗があったり、するかなと思っていました。というのは、今メインで私達Compassがやっているオンライン相談は20代の方が圧倒的に多いんですね。
20代と30代の方が多くて、チャットだったり動画通話で相談をするサービスです。

施設とか入り口に看板があるわけでもないですし、公共の施設でもない中でいきなり相談するっていうのはハードルがあるかも、年齢が高くなればなるほど不安だったりするかもなというイメージを持ってました。
しかし、神戸の地域差もあるのかもしれませんが、すぐに1000人規模で入ってきまして、皆さんにすごく使っていただいてるなという。もう何百人もの方が相談に使ってくださってますね。
リリースが12月の半ばなので、すごく順調というか、いい伸びじゃないかなと思います。

関 実際就職まで結びついていることもあるんですか。

大津 はい。就職まで進みますね。ただコロナがあるので、平均的な数字だけ見てしまうとやっぱり弱いなと思うところもあります。求人が止まっているところや、普段だったら採用が出る人がちょっと検討されたりというところで、ジャッジしにくいっていうところはありますね。
人材が流動し始めてもいるので、AIによって客観的に見てフィットするっていうところをスムーズに紹介できたり、AI機能の前段階で相談を受けているので自己理解が進んだ方を紹介すると、やっぱり決まりやすいのかなっていう。
ただ、まだまだ課題はあります。

関 どういう課題があるんですか?

大津 課題としてはやっぱり就職先っていうところで、年収500万円以下の方をターゲットにしているんですが、今求人があるところの業界が、コロナの影響で限られてくるところがあります。いつ戻ってくるのかっていうところは、世界的な話になってくるとは思うんですけども。

今みたいに緊急事態宣言中とかは厳しい。解除になったときは一瞬上がるかと思ってるんですけども、継続してどの業界が適しているのか…優良求人っていうのを探していく、つまり本当に皆さんにとってベストマッチングな企業はどこなのかっていうところを一緒に探していく、働き方を作っていくっていうところが大きい課題だなというに思っています。

 なるほど、ありがとうございます。中沢さんにちょっとお伺いしたいんですけど、実際サービスを導入した現場側としての感触ってのはどんな感じなんですか?

中沢 非常に好意的に利用者に受け入れられているんじゃないかなという気がしてます。びっくりしたのは、NHKさんに取り上げていただいたりとかですね、やはり今後、企業から見ても非常に興味深いものだったのではないかというところは感じました。
これのリリース当初から実際におっしゃってましたけれども、もうすでに利用者は1000人超える勢いであると言ったところもですね、やはり非常にニーズの高かったサービスがコンパスさんの方からリリースできたのかなという気はしております。

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就労支援に関する社会課題をITスタートアップと解決するには(2)に続きます。





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