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デジタル公共財の未来を拓く濃密な2日間 - Funding the Commons Tokyo 2024

来る7月、東京で開かれる「Funding the Commons Tokyo 2024」(以下FtC)は、私が特に期待を寄せるイベントです。公共財への資金調達モデル創出を目指すこのカンファレンスが、長年私が抱えてきた悩みの種に挑戦するためのものだからです。デジタル時代の公共財、つまりオープンソースソフトウェア、オープンデータ、オープンAIモデルなどへの投資の乏しさという根本課題に対する新たな道を皆さんと探りたいと思っています。

FtCの開催概要

第10回目を迎えるFtCは、国連大学の渋谷キャンパスで、DeSci Tokyoとのパートナーシップのもと開催されます。人口減少という大きな課題に直面する中、FtCは公共財の新たな支援策と再生のビジョンを提示する重要な場となるでしょう。2日間にわたり、プレゼンテーション、パネルディスカッション、協働セッションが行われ、参加者が現地・オンラインから結集し、議論と創造的なアイデア交換の機会が用意されます。
デジタル公共財を推進している国連の関連施設でこのようなイベントを開催できることに、とてもワクワクしています。

デジタル公共財投資の遅れと日本の現状

デジタル公共財(digital public goods)は、民間サービスとは異なり、誰もが自由に利用できる社会インフラです。しかし、欧米で共有されているような"Public Code"の考え方は日本には根付いていません。日本政府はオープンソース戦略を持っておらず、デジタル公共財に対する研究開発費の投入も控えめです。海外では活発に活動しているオープンソース系の財団も、日本での活動はあまり目立ちません。

行政のデジタル公共財の必要性と難しさについては、以前この note でも書いています。

民間企業においても、オープンソースを軸としたイノベーションへの関心は低調です。オープンソース関連のカンファレンスへの参加や発表は限定的で、国際標準化活動にも熱心ではありません。こうした状況が公共財投資を阻害してきた背景にあります。

昨今の web3 の台頭もあり、世界では改めてデジタル公共財への関心が高まりつつあります。Gitcoin など、オープンソースプロジェクトへのファンディングプラットフォームや、hypercerts によるインパクト評価など、クリプトを活用した前向きな動きも生まれています。(※)
しかし残念ながら、こうした先端の試みは日本で共有される機会は少なく、グローバルな潮流との連携が不足していました。

※一方で、web3 は資本主義的、投機的な取引を加速している側面もありますので、注意が必要です。

Code for Japanが抱えてきた課題と期待

デジタル公共財への投資が低調な状況を身をもって味わってきたのが私たちの団体 Code for Japan です。防災関連のアプリやオープンデータを使ったオープンソースツール、オープンソースのデータ連係基盤、市民参画基盤である Decidim のローカライズなど、社会の公共財となるべきプロジェクトを数多く生み出してきましたが、継続的な運営資金の確保に常に頭を悩まされてきました。適切な助成金が少なく、あまり頼れなかった結果、事業費の8割近くを行政の委託事業収入に頼らざるを得ませんでした。自主事業への投資がもっとあればできることも増えるのに、どうしても単年度毎の行政委託事業に力を割かざるを得ないのが実態です。

そんな状況の打開につながる可能性があるのが FtC です。Web2、web3 関係のIT業界から学術機関、NPO、大企業、行政に至るまで、様々なセクターから関係者が結集します。過去にこの分野での議論が少なかった状況を変え、オープンソーステクノロジーを活用した新たな資金調達モデルづくりに取り組むのです。

従来の公共財資金調達は政府助成金や民間寄付に頼らざるを得ませんでしたが、十分な資金を確保することは難しい状況でした。FtC が目指すのは、分野横断的な連携を通じて、これまでにない持続可能なモデルを生み出すことです。

もし FtC の議論から継続的に公共財を支えるエコシステムが発展すれば、シビックテックの活動の幅は格段に広がるはずです。既存プロジェクトの拡充にとどまらず、脱炭素社会の実現や災害対応力の向上、教育プログラムづくりなど、大規模で挑戦的な新規公共財プロジェクトに取り組めます。CO2排出量の見える化や再生可能エネルギー管理手法の確立、被災地支援システムの開発など、デジタル化による変革が期待できるのです。

解決すべき課題は多い

もちろん、デジタル公共財への投資には乗り越えるべき課題が多々あります。参加者の多様性が必要ですし、投資ルールの策定やインパクト評価指標の設定における合意形成は容易ではありません。異なるバックグラウンドを持つ関係者間での信頼を構築するのは容易ではなく、技術的にも超えなければいけないことは多々あります。

しかしながら、デジタル公共財への投資が進み活用が広がれば、SDGs などの地球規模の課題解決にも大きく貢献できるはずです。デジタル化の流れに遅れをとってきた日本が、ここを確実に捉え、世界にユースケースを示す絶好の機会ともなり得ます。私自身も、全力でその実現に向けて取り組んいきますし、Code for Japan でも、デジタル公共財への投資基金について構想中です。(興味ある方はぜひご連絡ください。)

このイベントを機に、デジタル公共財への関心が日本でも高まり、その発展に向けた機運が加速することを心から願っています。10年のシビックテック活動を通じ、公共財の重要性は痛いほど理解しています。

期待の参加者・関係者:

過去の FtC には、Vitalik Buterin、Juan Benet、Kevin Owocki、Sarah Horowitz らの重要な公共財の思想家が多数参加してきました。今回は Scott Moore、cheeky gorilla、占部まり氏などによる興味深い講演も控えています。

主催は Funding the Commons と DeSci Tokyo で、UNICEF Office of Innovation、 Plurality TokyoFracton Ventures、Code for Japan、ミツバチ、らパートナー団体が議論を深める重要な役割を果たします。Protocol Labs を始めとする協賛企業からの支援も得ています。

公共関係者、オープンソース関係者、研究者、web3 関係者など、たくさんの方の参加を期待しております。

デジタル公共財への新たな投資の未来:

デジタル公共財への新たな投資モデルを切り拓く、この2日間。国連大学という適切な会場から、日本が公共財の未来へ向けた新たなビジョンを発信する重要な機会となることを、心より期待しています。

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