最近の記事

星と生

人生において、自分がどこに向かって歩いているのか分からなくなることがある。目標や夢を叶えられても、その先には何があるのか。目標や夢すら、思いつかないこともある。人生プランを考えることができず、ただ漠然とした将来への不安に駆られてしまう。 人生の最後は、死と決まっている。過去、現在、未来の順に、直線に時間が進んでいると認識すると、私たちは、死に向かって歩いているように見える。元々存在しなかった無から、生を与えられ、また自ら無になろうと歩いているようだ。スタートとゴールは無。人

    • 溺れて、生きて、彷徨って

      記憶 息ができない。 腰に付けた網が海底の岩に絡まり、視界は暗闇に覆われ、口の中には不快な塩辛さが広がっている。 身動きを取れば取るほど、網の絡まりは複雑になっていく。 息ができないのに死んではいない。 息がしたい。 楽になりたい。 その感覚が、今もはっきりと私の記憶の中にある。海に溺れたことなど、私は一度もないというのに。 その記憶は、私の生きるという感覚そのものだった。不死の者が海底に囚われ、生き続けているような、終わりの見えない宇宙の果てを彷徨っているような。

      • 【映画】関心領域 ヘス家は私たち

        アウシュヴィッツ強制収容所の隣に住むヘス家は、隣で悲惨な虐殺が行われているにも関わらず、裕福な暮らしをしている。 ヘス家の生活を、私たちは批判できるだろうか?この映画は、私たちを映し出していると感じた。平和が確保された場所で、私たちには関係がないと何の疑いもせず、ただただ幸せを求めて暮らす私たちと、ヘス家のどこが違うというのか。 SNSやニュースなどで、異国の地で悲惨な行為が今もなお行われていることを知っていながら、私たちは何もなかったかのように生活している。物理的に隣で

        • [映画]ベーグルとニヒリズム

          前回に引き続き、映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」の魅力を語ります。 さて、一つ前の投稿にも記した通り、私がエブエブにおいて最も触れたいのは、ニヒリズムについてだ。この映画の最も核となる部分に、ニヒリズムという思想がある。ニヒリズムというのは、日本語で虚無主義と言って、簡潔にいうと、人生に意味や価値はない、とする立場のことを指す。それを視覚化したのが、主人公エヴリンの娘、ジョイと、彼女が作り出した、ベーグルである。 私自身は、自分を虚無主義者だとは

          [映画]エブエブの魅力

          第95回アカデミー賞で作品賞を受賞した「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」。多くの人から高い評価を得ている一方で、批判の声が目立っている作品でもある。私は、この映画を観た後、簡単に言うと、「すごい映画に出会ってしまった!天才だ!」と感動というより感心してしまって、興奮しまくりだった。人を選ぶ映画であることも、批判が出ることも納得できたが、それでも私はこの映画を見て、本当に今までにないほどテンションがぶち上がった。エンドロールが終わっても、余韻で立ち上がれない

          [映画]エブエブの魅力

          [映画]カニバリストを用いて人間の孤独に寄り添う

          2023年2月17日に公開された、「ボーンズ・アンド・オール」。「君の名前で僕を呼んで」のルカ・グァダニーノ監督×ティモシーシャラメの再タッグ。これは絶対に観なければと公開初日に映画館へ足を運んだ。観終わったあと、なんとも言えない感情が奥から押し上がり、立てずに放心状態。とんでもない映画を観てしまったような気がしたがあまりそれがなぜなのかよく分からなかった。(以下ネタバレを含みます。) 観終わった後、頭の中はこの映画のことでいっぱいになった。サウンドトラックを聴きながら映画

          [映画]カニバリストを用いて人間の孤独に寄り添う