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Chief Adjuah (formerly Christian Scott)を観に行った @Blue Note Tokyo

2013年9月12日、Chief Adjuah (formerly Christian Scott)のライブを観にいってきた。

彼のライブは2020年4月に、今は無き横浜のMotion Blueで初めて観るはずだったけど、流行病によって来日中止。
そこから3年経って漸く生で観ることができた。ここで一言、エグかった。

彼を知らない人はいないと思いますが、ごく簡単に紹介。
Chief Adjuahはジャズ、ロック、ヒップホップ、自身のルーツであるネイティブアメリカンやアフリカ、さらにはアジアの民族音楽など、多種多様なジャンルを統合した「Stretch Music」を掲げる、現代ジャズを牽引するミュージシャン。ニューオーリンズ出身。
元々は「Christian Scott」という名前で活動してたけど、それが「Christian Scott aTunde adjuah」になり、2021年頃から「Chief Adjuah」を名乗る。

プレイヤーとしては、その強烈すぎる音圧と空間系のエフェクターを組み合わせた音色、プレイは唯一無二。
また、オリジナルのトランペットやフリューゲルホルン、個性的なファッションなどのビジュアルも魅力の一つだ。

2010年発表の「Yesterday You Said Tomorrow」の2曲目
Thom Yorkeのカバーがとにかくカッコイイ

ジャンル問わず、世のアルバムジャケットの中で一番かっこいいと思う
「Stretch Music」(2015年発表)

だいたい2014年くらいかに一聴して「エゲつないほど吹くなあ」とそれなりに追っかけてたけど、2016年の「Tiny desk Concert」を観て、脳天を喰らった。

彼の音楽には他には無いほどの強烈なエネルギーを感じる。
特に上の動画の3曲目「K.K.P.D」。
モロにその名の通り(Ku Klux Police Department)、自身が経験した黒人差別に対する怒りだったり、ぐちゃぐちゃな感情を曲にしたものだからか、すごく”刺さってくる”。
ちっさなスマホの画面越しながらこの演奏を観て、いっきにトリコになった。

今回の来日は4年ぶりで、なんだけど、僕は前日まで行くつもりはなかった。
それはなぜか。

2017年に彼は一族の長「Chief」となって以降(活動名が変わったのもこれが理由だ)
作品をリリースする毎に「Stretch Music」がより進化していったんだが、直近2作目からより自身のルーツであるアフリカへと近づいていく。
これが個人的によくわからんかった。
(その方向に行く意味はわかるけど、音楽が理解できないの意)

最新作に至っては、これまたアフリカの民族楽器をベースにしたオリジナル楽器 ”Adjuah's Bow”という楽器と自身の歌で演奏、トランペットを封印。
最後の曲までペットの音が聴こえず、「おいおいおい・・・」と思った。

あくまでも個人的な感想として
いくらアーティストと言えどトランペットは吹いてくれよ!
という気持ちがあったので、久しぶりの来日情報が出ても行く気になれなかったのだ。
しかも、メンバーがいつもの面々じゃないし。。。

そんなこんなで、正直ちょっと気になる気持ちはありながらスルーするつもりでいたが、
X(旧Twitter)を眺めると、そこにはChiefの初回ライブに行ったと思わしき人のポストが。

「後半はトランペット吹いた!」

とあるではないか。
気づいたらブルーノートの予約サイトで翌日の公演の席を確保していた。

ということでライブを観てきたわけですが、
感想としては冒頭にも一言書いた通り、エグかった。
観に行って正解でした。

ステージに唯一置いてあったゲルホン "Reverse Flugel"


前半の3曲が最新アルバムからの曲で、先述の ”Adjuah's Bow”と自身のチャント+ギタートリオによる演奏。
後半2曲+アンコールでトランペット&フリューゲルホルンでの演奏だった。

懸念していた前半の演奏についてだけど、アルバムからの予想に反してめちゃくちゃ格好よかった。
ガッチガチにアフリカ民族様式でまとめたレコーディング版と違い、バンドセットだったことが影響しているじゃないかと思う。
バンド形態の制限により、図らずもジャズのフォーマットに落とし込まれたことで、音楽的にわかりやすくなったと思う。
(逆にガチの民族音楽を期待していた人は中途半端に感じたのだろう。そんな感想も目にした。)

後半に関してはもう、ありがとう…という感じ。
ついにあの音を生で浴びることができて、感無量である。
アンコールでWest of the west 聴けたのはちょー嬉しかった。

バックバンドの3人はライブまで全く知らなかったけど、これまたよかった。
DrのElé HowellとBassの竹永龍馬(なんと、熊本出身の父とアメリカ人のハーフらしい)の2人は、彼らがめちゃめちゃ小さい時(4歳とか6歳とか言ってた気がする)にジャムセッションで会って以来の繋がりらしい。
GtのCecil Alexander は去年、Kurt Rosenwinkel の Heartcore Recordからデビューしてたらしく、これから要チェックである。
(早速Apple Musicで聴いたけど、奥さん?となんの捻りもない「Here, Ther e and Everywhere」のカバーがあって少し笑ってしまった。他の曲はかっここいい)

ステージ上のChiefは、こうした若手を連れてきたこともあってか、”ボス”という感じがあった。
その緊張感ある音楽性とは裏腹に常に余裕のある態度、メンバーの緊張感を解くかのように各人のソロ中も寄り添い、
単にバンドリーダーとしてではなくて、”Chief”として人を率いる姿を垣間見た。
こういったことは実際にライブで観てみないとわかんないな。

強いて不満をあげるとすると、単純に曲数が少なかったかなーと思う。
EC含めて6曲でちょうど1時間くらい。(前日は7曲だったらしい…)
あとはMCにいちいち反応して笑うところじゃないとこでも大声で笑ってたお姉様
でも、これは正直集客の問題もあるかもしれない。
おそらく自分と同じように、最近の路線についていけない人がいるのだろう。
多分キャパの半分くらいしか入ってなかったんじゃないかな?
この集客状況が次回の来日に影響しなければいいけど、、、

最新の路線がどうであれ、一度琴線に触れたアーティストは観に行くべきだと気付かされたライブでした。


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