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愛すべきおかしな酔客ベスト3

この雑文はnoteに書いている『広告本読書録』を更新する際、Facebookで拡散するためのもので、朝食でいえばお新香、夕食でいえば小鉢、スパゲティでいえばタバスコ、カレーでいえば福神漬けみたいなものです。
つまり添え物ですね。

なので、できるだけ目をつぶっていても書けるようなものをこころがけています。だいたい、おひるやすみにササッーと書いて、夕方もう一度見直して、投稿できる軽いやつ。

そのためか、だいたい書く内容が「自分の情けない話」が中心になります。子供の頃からの見栄坊なので本音をいえば人様にじまんできる話をしたいのですが、はてなにかあったっけ、と思い巡らせるたび頭の中に靄がかかってしまい、筆が進みません。アルツですね。

しかしさすがに自分を切り刻み続けるのも飽きてきました。と、いうことで今日は珍しく、おかしな人の話をいたします。

■ ■ ■

ぼくはハタチでコピーライターになり25歳で挫折します。挫折の果てにたどり着いた西池袋の居酒屋で店長という天職と出会い、水商売を一生の仕事にしようと誓いました。そのときにお店によく来てくれた、おかしな酔客を紹介します。西池袋一番街。三業地が近いだけあって、変な人多かったス。

衝撃!いきなりおあいそ男

ビシャーン!と玄関を全力で開けて大声で「おあいそーーっ!」叫んだかと思いきやそのままビシャーン!と再び玄関を全力で閉めていなくなります。

最初、びっくりしましたが3回もみれば慣れるものです。気がつけば「ああまた来たか」とすっかり常連に。逆にはじめて遭遇するお客様の反応を見るのが密かな楽しみになりました。そしていつの間にか消えてしまった。どこいったんでしょうかね。

似たようなタイプとして30年ほど前、練馬から所沢にかけて出没していた「あけ逃げ犯」がいます。信号待ちのクルマのドアを「あけ逃げだっ!」と叫びながら開けて逃げる輩です。

キッちゃん

古くからの常連さんで、キッちゃんというのはあだ名です。いつも「菊姫」というお酒を注文するからキッちゃんなのかと思っていたら、どうやらキ●ガイのキッちゃんだそう。

「ムラチョちょうだい」と醤油皿だけオーダーすると、そこに醤油を垂らし、おもむろに輪ゴムを漬けては舐めはじめます。「これ、なくならないツマミなんだよね」そのときぼくは彼のあだ名の由来に戦慄したものです。

ある日キッちゃんはカウンターに座ったまま上半身を揺らしています。それもかなりのスピードで。なにやってんのかな…とおもいつつ、注文のお酒(もちろん菊姫ですね)を持っていくと「いやあ、このたぬき、強いね!」なんとキッちゃん、カウンターの上のたぬきの置物とボクシングしていたんですね。スウェーバックでたぬきからの攻撃をかわしていたんです。

わたしの王子様カップル

だいたい不倫カップルが常連化するお店だったんですが、中でもここは…。逢瀬を重ねるごとにベタベタぶりが増していき、しまいにはまぐろを口移しで食べるまで恋はハッテンします。

しかしどんな恋にも終わりはくるもの。ある晩、いつもの軽いノリとは違うおもくるしい雰囲気をまとってご来店。オーダー以外、無言のふたり。あんなにオレに絡んできたのに。うつむいたままの彼女。口を真一文字に結んだ男。どこからともなく聞こえてくる静かな嗚咽

「あの、もうすぐ閉店なんですけど…」ぼくが声をかけたその刹那「わたしの王子様になってくれるっていったじゃない!」彼女の白魚のような細い腕が綺麗な弧を描き、徳利にみちみちていた春鹿冷や二号はあますところなく彼の顔面にバシャッとな。顔射ってヤツをはじめてナマで見ました。

その日からぼくは彼らのことを「わたしの王子様カップル」と呼ぶようになったんですが残念なことに二度といらっしゃいませんでしたとさ。

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いま書きはじめたらまだ他にも変わった酔客がぎょーさんおることを思い出してしまいましたが、きりがないのでこの辺で。みなさん、夜の街で酔っぱらいを見たらやさしくしてあげてもいいかもしれませんが、やっぱりあんまり近づかないほうがいいかもです。

BGMはThe Folk Crusadersで『帰ってきたヨッパライ』でした。

(おしまい)

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