見出し画像

わが愛すべき名脇役【漫画編】

この歳になってわかったのですが、そしてこの歳になるまでわかってなかった時点で終わっているというよりはじまってもいないのですが、どうやらわたし、主役にはなれないみたいよ。

ここでいう主役とは、業界の第一人者といいますが、世の中にインパクトを与える存在です。ジャンルはなんでもいいです。いわゆるメジャーデビューというヤツですね。メインストリームで名前が知られる状態。

なりたかったのか、というと、なりたくなかったというと嘘になる、というレベルでぼんやりとなれるといいな、ぐらいに思っていた。

しかし何者にもなれなかったわたし。いつか何者かになれると根拠なく信じ続けた挙げ句。

だからといって何か努力はしたかというと、何もしてこなかったので当然なんですけどね。

仮に今の自分が本当の姿だったら…

もしこれを読んでいる人のなかにヤングがいたとして。いたとしたらヤングのみなさん、勉強はきちんとやっておいた方がいいです。素因数分解で満足してはいけません。サインコカインタンジェリンドリーム、みたいなアホな呪文で笑っていられるのは社会に出るまでです。

そんなこんなで

根っからのモブキャラ。どこにいっても主役を張れない。一握の砂の一粒でしかないわたし。ついつい世のエンタメを見る時も脇役のほうに感情移入してしまいがちです。

と、いうことで徹頭徹尾私事で恐縮ですが、独断と偏見と時代の偏りをものともせず、これまで夢中になって読んできた漫画に登場する脇役の中から特に印象的だったキャラクターを紹介します。

おそらく画像には著作権が発生していることでしょう。ですが拙noteを楽しんでくださる方はせいぜい10人前後。またこの手の画像を扱った記事はnote編集部もスルーしてくれるので拡散もありえません。

と、いうことでごくごく内輪で楽しむものとして、ご寛恕賜りますようお願い申し上げます。

マイク・赤木

ご存知、料理漫画のパイオニア『包丁人味平』からはカレー戦争編での敵役であるマイク・赤木をチョイスします。

モデルは完全にロッキー青木ですね

(まってここは鼻田香作じゃないの?)

そう思ったあなたはなかなかの味平フリーク。そう、カレー戦争編で味平と真っ向から勝負するのはカレー将軍と呼ばれた鼻田香作です。

しかしわたしから言わせると鼻田香作はこの章においてほとんど主役。脇役としていぶし銀の存在感を示してくれたのは誰あろうマイク・赤木その人なのです。

両親の顔も知らないマイク・赤木。孤児院を出た12歳の頃から港湾労働者として生計を立てます。彼はアメリカに渡る、というただひとつの夢にかけて勝負にでます。密航に成功したマイクはガムシャラに働きました。

幸いアメリカ人はみなナマケモノです。異論はあるかと思いますが連載当時のステレオタイプなアメリカ人の描き方としては致し方なし。時代のせいです。牛次郎先生やビッグ錠先生を責めることはできないでしょう。

そんな環境でマイク・赤木はジャパン・アズ・ナンバーワンの勤勉さを持ってサクセスの階段を駆け上がっていくのでした。

わたしは彼のどこに惹かれるかと言いますと、恐ろしいまでの自信と、その自信がカンタンに揺らぐその二面性にあります。

どうです、このロジック

アメリカでスキヤキチェーンを流行らせた(おそらくBenihanaがモデル)マイクは日本に凱旋し、今度はカレーライスで天下を取る。いや取らなければならない。なぜならわたしはマイク・赤木だ!!という、間違った文章の例みたいな文法で宣言します。

その割に

松鶴家千とせじゃありません

ちょっとしたことでえらくビビります。
こんなセリフを真剣に叫ぶ大人って…。

マイク・赤木であることがアイデンティティ

威勢のいいセリフを吐きつつ背後にはとてつもない不安や渇望感、承認欲求が見え隠れします。

そしてとうとう最後は鼻田香作のブラックカレーにやられてしまう人第一号となるのでした。

ボワーン・・・

味平史上5本の指に入る最高のシーン。何このバックのシマシマ模様。なんのことはない、麻薬入りのカレーを喰わされて幻覚を見ているだけなんですけどね。

マイク・赤木、可愛げ満点の憎めない名バイプレイヤーです。

あれだけ大きな風呂敷を広げておきながら、最後は電話一本で撤退を告げる。このあたりのドライな感覚も思いきりアメリカンですね。

カレーによる日本征服てww

柄崎貴明

お次は社会の裏側をリアルに切り取る『闇金ウシジマくん』からカウカウファイナンスの番頭さんとも言える柄崎貴明を取り上げます。

わたしが柄崎に惹かれる理由は長期連載にはありがちな、その風貌の変わりようにあります。

連載開始当初はこう。

こわっ!

それが中盤ではこう。

だいぶスッキリ&名言使いに

最終巻ではこうなります。

最終回ではやさしい雰囲気に

作者の筆力画力、さらにはアシスタントによって大きく変化する柄崎。彼はウシジマくん信仰者と言っても言い過ぎではない、もはや同性愛に近しい感情を丑嶋馨に抱きます。

わたし、柄崎の気持ち、すごくわかるんです。わたしも前職で直属の上司に心酔し、上司が黒といえば白いもんも黒、という覚悟で生きていました。文字通り金魚のフンのように後をついて歩いていた。まあ、そんなんだから主役になれないんでしょうけどね。

あれはなんなんでしょうね。男が男に惚れるといいますか。胆力においてかなわない相手にまさに尻尾を巻く感じ?もしかするとこの感情はいかにジェンダーレスの時代といえども女性には理解できない秘密の花園かもしれません。

柄崎、危ないよ

北野監督

ふと気づけばもう2,300文字もイッてるんで、最後は手短に。

不朽の名作『スラムダンク』は脇役の宝庫で誰かひとりあげるのも苦労します。花道にエアジョーダンを冗談みたいな価格でゆすられるチエコスポーツの店長から谷沢くん、テツ沢北と枚挙にいとまがない。

その中でひとり、わたしが推すのはこちら。

「バスケット」を好きな言葉に変換しよう

そうです大阪豊玉の前監督北野さんでごわす。

北野監督は若かりし頃、湘北高校のホワイトヘアードブッダこと安西監督と腕を競い合ったプレイヤーでした。大学の同期なんですよね。

ここはゆかりかな?それともきじ本店?

「高校のたった3年間でできることなんか限られとる。全部やろう思てもムリや。そやから豊玉の練習は、オフェンス8にディフェンス2くらいのもんや。そらあ批判もあるけどな。そんでええのや…その方が、バスケットを好きになってくれる

そんな理念をもとに組み立てられた攻撃スタイルが豊玉名物『RUN&GUN』でした。

この『RUN&GUN』で豊玉高校は大阪一強いチームになりました。当初は学校側、つまり理事長や校長たちからもてはやされます。しかし全国レベルともなると攻守バランスに優れた学校が高い壁となって立ちはだかります。

結果、何年たってもベスト8どまり

そんな北野監督に学校側はRUN&GUNを捨てるよう指示します。さらなる成果を要求するようになるのです。

そしてわたしが最も好きなシーンを迎えます。

いつの時代も経営と現場は・・・

じじいはいささか疲れたわ

どうにも感情移入してしまうこの台詞。サラリーマンとして酸いも甘いも経験した方ならわかるのではないでしょうか。

たとえば入社当時、あなたが取り組んだ研究が評価される。競合差別化にもつながり、業績貢献するわけです。周囲、とりわけ上層部からはもてはやされます。

その調子で研究を続けていくうちに、会社はぐんぐん成長。フェーズが次の局面を迎えます。そうなると本質的には何ひとつ変わらなくても社内での正義が変わるのです。

いつしかあなたの研究は上層部から評価されないどころか真っ向から否定されるようになります。

いつまでそんなことやって悦に入っとるんや。みたいなことを言われます。ここんとこ業績にキャップが被さっとるのはおまえのせいやでおこるでしかしほんまにしかし。みたいなことまで言われるようになってしまいます。

あなたはいつしか「はは、ついこの前までホメとったんちゃうんかい。じじいはいささか疲れたわ」と事あるごとにつぶやくようになる。

このとき、あなたの心の中には北野監督が、確かに存在するのであります。

そしてあなたはその会社を去り、小学生相手にミニバスの監督になるわけです。

北野監督のバスケット愛にも負けないぐらいの愛情を持って自分の仕事に向き合える人って、すばらしいですよね。

すみません、手短に終わりませんでした。

ということで

自らに課した規定文字数3,000字を大幅に超えてしまったのでここらでおしまいにします。

だいたいからして主役に対して脇役の数のほうが多いんだから、脇役は脇役としてせめて名バイプレイヤーを目指す。このような人生の指針をできるだけ早めに定めることが幸せの近道なのかもしれません。

幸せってなんだっけ?

あなたの家にポン酢しょうゆはありますか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?