ネットプリント『佐々木』 (2023.12.5発行)
昨年末に公開したネットプリントを、相方の許可を得てこちらに再掲します。どうぞお読みください。
短歌連作
指南 榊隆太
よく見える気がする星のよさばかり頭のなかで境界に行く
映画の銃がわたしを殺してくれたからわたしのあとに起こる恫喝
一昨年の冬で途絶えたツイートの、勉強垢の、タイムラプスの、
空爆は手塩にかけて育たない夜に通電する鷹の群れ
雨がみぞれにみぞれがシールに慣れてゆく 中国の換気扇は強か
雪山のように煙草は燃えながら煙に変わる いいんだけどね
あなたの言葉で橋が笑ってもうちっとも毒なんて怖くない
そこではとても象徴的な島のたとえば液晶パネル
糊付けカスタネットラブイデオロギー
双子は一つの図鑑を読んで想像される二人の子ども
ポケットのなかで小銭が増えてゆく紅葉が墓にふれたなら引く
浮世絵の影響らしい有名な団地がひかるまで ひかり
レジ袋有料化の夏。それからずっと有料の夏
スプラッター 彼に傾く選曲の プリッツ 風は上から下へ
警鐘を鳴らしたければご自由に 違う展覧会に同じ絵
もう箱がないから本を諦めるあなたが信頼する心理テスト
虎の王手/海の寮 褒められて喜んでいいのは中学生まで
セスナなら無免許で飛ぶこの隙に地震が起こったりしないかなあ
個人です 巣々木盥
東京はいつも雨とは言わずともサイレン震えあぶく沸き立つ
ふかふかと天下取っても二合半言い聞かせて寝る三限空きコマ
ぬばたまのひとよひとよにひとみごろアポロ計画、人を円かに
真理だからshort動画も大は小を兼ねているおおなれ感に溶けこなす
平成に目くらましたのフェンダーに刺さっていたのニワトコの杖
尻に鈍痛、シートは許さずして東急池上線かわいい
ラーメン屋ナナメうしろのほろよいのサラリーマンに祝収益化
筆ペンをぎゅっと握って命毛に墨を通わしイヤホンを捥ぐ
煌々し何処の何奴だシノダリティor検索はさうなきことやも
俺ってばほんとに人が好きだから、いでそよひとりでくらしたりけむ
机下にあるペットボトルを踏み込むの くしゃくしゃわらうフラワーロック
個人の感想ですって言って、そうしてしっかりまず踏み込むよ
自転車が吹かれて倒れるゆつくりと一歩踏み出す時分であれよ
メモ:明日、クールに黒の革靴を、なにかのソムリエなってみたいな
や、スープは飲みきらないの、犠牲を厭うばかりが醤油で優しさで夜
だれでもよ 改札越しのさよならは火照るあたまで敬礼スラッシュ
雀またふるふると蛤になる僕ジャンパーにくるまれてねる
マネキンのフリして明日を迎えたい伸びやかに肩甲骨を引く
俳句五句
鳥の子 榊隆太
花過のとしまえんから順に死ぬ
殺したいほどあなたから秋の霜
蜂の仔の目玉も蜜にぬかるんで
とりかぶと祈りはいつも恥ずかしい
手と手をとって胡桃割り
旧年添えましておめでとうございます 巣々木盥
白息やアンセムを以て放ちたり
ちゃんちゃんこ被りて捲るや九九カード
鐘冴ゆるタイルに跳ねしな空振
ワンルーム北窓を塞ぎて明るし
モノグラム・キャンバス誰と聖誕祭
自己紹介
榊隆太
愛知県名古屋市出身。
前歯を折ったことがある。
巣々木盥
兵庫県伊丹市出身。
わざと失敗するYouTube広告を最後まで見てしまいます。
2023.12.5発行
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