みんなの本棚<2棚目/選者 坂口さん>
リレー形式で様々なメンバーから、おすすめ本を3冊選書してもらうシリーズ企画「みんなの本棚」。2人目の選者は、真﨑さんからバトンを渡されたUNIT2 クリエイティブディレクターの坂口倫崇さんです!
ぜひ、みなさんのインプットにお役立てください。
今回の本棚では、博展の主戦場である「空間デザイン」の「空」や「間」に関係する三冊をご紹介します。
1.デザインの視点から
「白百」原研哉
「白があるのではなく、白いと感じる感受性がある」、「白は日本の美意識に潜む「空」すなわち空っぽで何もないということが、むしろ無数のイマジネーションを受け入れる器として機能する」等、白の色そのものではなく、白を感じとるための百篇がまとめられています。日常の中の何気ないものごとを手に取り、丁寧に感じ取ろうとする思考の軌跡を垣間見ることができます。
私たちが現代社会で失ってしまった感受性を、白を通じて取り戻せないか、という問いかけも感じられます。
2.建築の視点から
「建築における「日本的なもの」」磯崎新
堀口捨己著「建築における日本的なもの」から引用されたタイトルのとおり、日本の特徴的な概念を論説しながら、カツラやイセを引き合いに日本の建築を論じた書籍です。
『空間へ』(1971)の「闇の空間」では、谷崎潤一郎著『陰翳礼讃』に触れて日本的な空間特性が述べられていますが、この書籍ではさらにそれらを包含したものが「「間」と「瓦礫」」にまとめられています。ここでは時間・空間の分節以前の「間」について語られており、「事物に内在している根源的な差異」「残余の空白として視覚化され、対象化されている」ものとしています。著者が企画し、パリにて開催された「間―日本の時空間展」(1978)の総括でもあり、その名の通り、時間と空間の相即不離の関係が論じられています。
3.音楽の視点から
「音、沈黙と測りあえるほどに」 武満徹
この書籍の主題は「一つの音」という章です。著者は「私は沈黙と測りあえるほどに強い、一つの音に至りたい。」と作曲家としての意志を表明します。沈黙とは一般的に音がない状態を指します。「(琵琶の一撥、尺八の一吹き)その洗練された一音を聴いた日本人の感受性が間という独自の観念をつくりあげ、その無音の沈黙の間は、実は複雑な一音と拮抗する無数の音の犇めく間として認識されている」と語ります。他にも、測りあうという対立構造は、沈黙の捉え方(「充実した沈黙」)、音を聴覚的想像力によって拡大して聴くこと(「十一月の階梯に関するノオト」)等でも見られ、作曲家であるとともに、鑑賞者(聴取者)であろうとする姿勢が見られます。
今回取り上げた三冊は、「空」や「時」、そして「間」を感受し、想像することに触れたものです。時間や空間という言葉は仕事でも、日常でも何気なく用いていますが、その成り立ちや捉え方を改めて考え直してみると様々な解釈があることに気がつきます。何もないことの豊潤さを先ずは受け止めて、私たちは何をすべきかを考えさせられる書籍をご紹介しました。
4.次の選者の指名
次回は「デジタル表現×ファッションイベントを夢見るテクニカルディレクター」の三浦光梨さんにバトンを渡します!
>>それでは、次回もお楽しみに!
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