白の残像



超越したもののなかに自分を見つめるとき、それは杏の仁のように、自分を包囲するもの。その甘美さを予感しながらも、己の小さな堅い未成熟さに、いくらかの焦燥と劣等を感じる。こんなものはじぶんばかりか。
 きょろきょろと外殻を見渡せど、窓もなければ風も吹かない。空気の揺れ動きや伝わる思考も、いまだかつて感じない。

諸刃の剣ね。
枕を抱いたビスクドール。
レースはセピアで煤けてる。

煙突掃除のおじいさん
おうちに帰ってパンを焼く
朝一番に捏ねといた
真っ赤なバラとチョコレート
さあさあ今日は給料日

 苦しめられている
 ここで苦しめられている
 芥子の未来の暗示のベッド
 小さな芯の燃え尽きる
 最後の蝋燭のその色よ
 飽くなき遊戯の目の中に
 塵ひとつ落とさぬ見事なおさなご
 乾きの中で無尽蔵に出でる
 儚き模様
 汗と脂に摩耗して
 浅い眠りに息切らす
 冷暗の彼方をいまここで彷徨えど
 誰一人として線上にあらず
 たった一人
 唇を咬む




ぼうやはお腹が空いていて
いつでも指をしゃぶってる
話もできないカナリアの
籠の隙間に指入れて
ぼくのミルクをあげたいな
猫もねずみも皆おいで
焼けた柱にうずくまり
腫れの引くのをまっている
カナリアぼうやに水かける
痛いの痛いのとんでゆけ
遠慮は無用よどんどんお飲み
渇きも涙で潤った
カナリアひらひら舞ってった
孵れぬお空へ舞ってった

        

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