ティンカーベルの魔法の粉は、これから出会う桃の恤界

人間は、あまりにも深く悲しんで泣いた時
その心痛の酷さから血の涙が零れるとか。
血涙、泣血。
最後の最後に枯れたのだそうだ。
そんな人をなかった事のように放っておけるから
人間の偉大さを感じる。
記憶を書き換えるほど。
朝の市場でとてもきれいな桃が並ぶが
通りすがりに握り潰すかの様だ。
人の視線はそのようだ。
けれど認めて欲しい。
どれほどの数の人間がそれを上回り優しいかを。
情けをかけ
その温かい手で見ず知らずの人間の涙を拭い
抱きしめ
料理を作ってもてなして
辛かったねとベッドで休ませ
自分は隣の部屋の
ダイニングテーブルでうつ伏せて
少しのうたた寝で
旅人の回復に満足すること。
目を開ければ
誰の瞼もまぶしく微笑む
瞳はまるで
ティンカーベルの粉の魔法。
回復とは施す側の心的成長の過程をこそ
指すのかもしれない。

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