いくつになっても挑戦し続ける人の姿は美しい

昨日に続いて、今日もアメリカの著名コラムニスト、ボブ・グリーン氏のエッセイから「男の中の男("man at his best")」という話をご紹介。

今回の有事で自宅にいる時間を持て余し、新しいことにチャレンジしはじめているひとは多いとおもう。そういう人たちは、今回の「危機」における後半部分、「機=チャンス」をポジティブに捉えられる人たちであろう。

最近では、テクノロジーの力を借りれば、いろいろなことが実現できる時代になったし、人生100年時代が当たり前となると、40代〜50代で何かを始めるとしても「遅い」ということはない。

ぼくは、年齢に関係なく、自分が「やりたい!」と思ったことに挑戦している人が、そのことを語るときの表情がたまらなく好きです。なぜなら、そこには他人との比較ではなく、自分の気持ちに正直になっている姿があるからです。

今日ご紹介する、「男の中の男("man at his best")」というコラムは、ちょっと古くさいけれど、年齢に関係なく、自分の夢にチャレンジしている人間の話です。

人間がこういう挑戦をする姿を自分の子供にも見せていきたい。

この話の主人公の男性は五十五歳の配管工。

男は父がアル中、母は病気がちで、学校に通うこともままならず、子供のころに読み書きを習ったことがなかったため、しゃべることはできたが読み書きができなった。彼は配管工の技術を身につけ、結婚して家庭を持ったが、妻や子供たちにさえ、字が読めないことは隠してきた。

しかし一年半前、男は字が読めないために仕事を失ってしまう。そこから地元カレッジの夜間講座を受講したり、独学で読み書きを学ぼうとしたが、だめだった。

そこで、ついに妻に自分が字が読めないことを打ち明けた。

妻は一緒になって、この問題を解決しようと動いてくれた。そこで、シカゴ非識字者授助会というボランティア団体が読み書きを教える個人レッスンを行なっていることを知り、パトリシア・ロードと出会う。

それから男は、パトリシアと週に二回、読み書きの練習を開始する。

字も読めないでよくここまでこれた、と彼は自分でも感心する。
「青写真を見れば、建物全体の構造はわかります。自分の家だって自分で建てたんです。読み書きもできない人間にしちゃあ上出来ですよ。家も建てて、この仕事でここまでやってこれたんですからね」

しかし、自分の人生に欠落しているものがいかに大きなものであるかを忘れたことは かたときもない。「いつも、字が読めるようになりたいという切実な思いがありました」と彼はいう。

「なんとかしなければ、という思いが頭から離れたことはありませんでした。かといっ て、だれに相談できますか? 字が読めたら、と何度思ったかわかりません。しかし、「私みたいなもんを助けてくれるお人好しなんてそうざらにいるもんじゃありません。だから、とにかくそれを隠すことに全力を傾けてきたんです」

ちょっと信じられない話かもしれないけれど、男は自分が読み書きができないことをひた隠しにし、生きてきた苦痛は想像に難くない。

しかし、男は人生の折返しを過ぎていても、なんとかして読み書きの力を身に着けようとする。

生まれてこのかた手紙を書いたことは一度もありません。祭日がきても、妻に贈るカードを選ぶことは私にはできませんでした。カードを見ても、なんと書いてあるのかまるでわからないんです。かわりにいつも花を買ってやりました。

だがいまは必死に勉強している。少なくともいずれは事情が変わるという希望をもつことはできる。

そのうちに本当になにか読むことができるようになることを夢見ています。大それたものでなくてもいいんです。とにかく最初から最後まで読みとおせればそれだけで十分です。

 最後の彼の決意は、胸に熱いものが込み上げてくる。

「手紙を書けるようになるのが待ち遠しい」と彼はいう。「最初の手紙は妻にあてて書くつもりです。どんなに愛しているかをいってやろうと思います。」

いくつになっても、このように自分が追い求めていることの実現に向けて、取り組む姿勢というのは、見ていて清々しい気持ちになる。

今日もありがとうございました。

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