『大正箱娘 見習い記者と謎解き姫』

【ネタバラシはありません。】

『大正箱娘 見習い記者と謎解き姫』

著者:紅玉いづき

出版社:講談社 (講談社タイガ)

発行年:2016年3月16日

--------------------------------------------------------

 紅玉いづきさんを初めて知ったのは、東京創元社のミステリ・フロンティアでした。『現代詩人探偵』というタイトルに惹かれて読んでみると、私好みの内容で、これはすごいと思った覚えがあります。そういう記憶があったので、今より熱心に書店に通っていた時期、講談社タイガの新刊で本書が平積みされていたので、こいつぁ買わないとと思ってレジに持って行きました。それから四年経ってしまいました。買って満足してはいけませんよね……。ということで、読書の秋だから2作連続して読もうと思い、『大正箱娘 見習い記者と謎解き姫』と『大正箱娘 怪人カシオペイヤ』を本棚から取り出してきました。表紙は、シライシユウコさんが担当しています。このイラストの感じ、どこかで見たことがあると思い、シライシユウコさんのホームページで確認してみると、例えば私が好きな東京創元社で何冊も表紙を担当されていました。なるほど~と思い、もう少し遡ってみると、創元推理文庫で出た『放課後探偵団』もシライシユウコさんが表紙を描いていたことに驚きました。『放課後探偵団』を熱心に読んでいた10年前(!)は、誰が表紙を描いていているか、あまり興味がなかったと思います。表紙が誰が、翻訳は誰が……を意識するようになったのは、ここ数年のことです。本の内容以外でも、こういうめぐり合わせが楽しめるのは素敵です。ということを考えた後で、本書を読みました! いま私は石川県に住んでいるので、紅玉いづきさんのご出身が石川県ということで、何だかタイミングがいいなあと勝手に思ったり、それは自分の裁量次第だろと思ったりしつつ、ページをめくりました。〈大正ロマンミステリー〉と銘打っているので、そのあたりの時代背景の空気感を、学校で習ったおぼろげな記憶をもとにして構築しようとしたのですが、その想像が合っているのか……。ミステリの趣向も味わい深いですが、全編にわたって「箱と女性」がテーマになっているのがすごいと思いました。本書でも触れていますが、大正時代は、家庭から社会に出て働く女性が増えた時代といわれています。そのなかで、本書の主人公が選択した生き方は、私が思っている以上に覚悟がいることだったんだろうなと考えました。そして、その主人公と共に謎に向き合う箱娘ですが、彼女こそが一番謎の人物でした。これ以上書くとネタバラシになるので辛いところですが、主人公の成長譚が縦軸で、箱娘が何者かという謎が横軸で本書が構成されているなあと思いました。個人的に好きな話は、旧家で起こる密室殺人の「悪食警部」……と言いたいところですが、呪われた箱の真実にかなりくらったので最初の「箱娘」を推します! よし、続きが気になるので、次の『大正箱娘 怪人カシオペイヤ』も読みます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?