『週末探偵』

【 ネタバラシはありません 】

『週末探偵』

著者:沢村浩輔

出版社:文藝春秋

発行年:2016年11月10日

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 私立探偵が職業ではない人(素人探偵)が主役のミステリは数あれど、「週末」にしか依頼を受け付けない探偵という設定が、なかなかの妙味だと思いました。

 ふと、彼らは探偵業の届け出をしているのかが気になりましたが、記述がないだけで多分しているのだろう、ということで、その微かな疑問は頭の片隅に置いておきます。(若竹七海さんの某長編を読んだとき、初めて「探偵業法」というものを知りました。)

 本書は、6つの話が収録された短編集です。事務所に探偵が二人いるのですが、彼らは普段は会社員なので、本格ミステリ的な事件(密室殺人やクローズドサークル)は取り扱いません。ということは、日常にひそむささいな謎を、ほそぼそと推理・推測していくだけなのかな……、と読み始めたとき私は少し不安になりました。(そういうささいな謎をほそぼそと推理するミステリは嫌いではありませんが。)

 しかし、それは杞憂でした。これ以上触れるとネタバラシになるので書きませんが、あるところから急に展開が変わっていき、「週末」限定の探偵だからこその問題にもなっていくので、思わず「やった!」と思いました。

 個人的ベストは、ひったくりの事件でも魅力的な謎が提示できるのかと驚いた「月と帽子とひったくり」です。


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