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『長い別れ』

【 ネタバラシはありません 】

『長い別れ』
著者:レイモンド・チャンドラー
訳者:田口俊樹
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
発行年:2022年4月28日

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(内容紹介)
 酔っぱらい男テリー・レノックスと友人になった私立探偵フィリップ・マーロウは、テリーに頼まれ彼をメキシコに送り届けて戻ると警察に勾留されてしまう。テリーは妻殺しの嫌疑がかかっていたのだ。そして自殺した彼から、ギムレットを飲んですべて忘れてほしいという手紙が届く……。男の友情を描くチャンドラー畢生の大作を名手渾身の翻訳で贈る新訳決定版。(解説・杉江松恋)
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 『長い別れ』、田口さん訳で再読しました。やはりいいなあ……。清水さん訳で初めて本書に出会い、村上さん訳で読み直し、そして今回は田口さんの訳で本書に向き合うことになりました。私はローレンス・ブロックさんのマット・スガタ―シリーズが大好きなので、おのずと田口さんの訳にはなじみがありました。だから、本書が発売する前に、SNSで田口俊樹さんが『長い別れ』を翻訳するという情報を知ったとき、これは買って即読めねば! と静かに興奮したものでした。本編はというと、マーロウとテリーとの交流シーンしか正直なところ覚えていなくて、中盤の内容がごっそり記憶から抜け落ちていました。(それなのに本書が好きとか言っていたのか。自分の記憶力に幸あれ……。)なので、先が読めない展開で、すごい楽しく読みました。なおかつ読み終えるのがもったいなくて、後半になるにつれて読むスピードが遅くなりました。通勤時間に読むことが多かったので、家と職場の往復でやつれているなか、唯一の至福のひと時でもありました。
 安易な考えですが、普段滅多に飲まないギムレットを今度飲んで、本書に思いを馳せようと思います。男の友情とか夫婦とか信条とか。何というセンチメンタリズム。
 本編以外にも、田口俊樹さんによる訳者あとがき、そして杉江松恋さんによる解説もあり、読みごたえ抜群です。今までは『長いお別れ』派でしたが、今回で『長い別れ』派になりました。「お」がとれるだけで、なんでこうも印象が変わるのか。今まで意識もしていませんでした。すごい発見です。

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