『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

著者:村上春樹

出版社:文藝春秋(文春文庫)

発行年:2015年12月10日

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 単行本は、2013年4月刊行。帯には、〈ニューヨークタイムズ ベストセラー第1位〉と書かれています。すごい。あと、二つの文があります。〈自分が見たいものを見るのではなく、見なくてはならないものを見るのよ。〉、〈名古屋そしてフィンランドへ、つくるは16年前に閉じた心の蓋を持ち上げる旅に出る。〉……どちらも本書についてざっくり表している文章です。4、5冊しか村上春樹作品を読んでいない私ですが、それでも日常生活で独りで「やれやれ」と口にするくらいは影響されているので、気をつけて読むことにしました。と思っていたのですが、気の利いたセリフ、お洒落な比喩表現、これは参りました。参ったといえば、私の大好物な探偵小説的要素が結構あって、これも参りました。一つの謎に対して、探偵役(この場合、多崎つくる)が関係者に聞き込むというストーリーは、私の読むスピードを加速させました。その一方、登場人物の意味深な言葉や警句が出てきたときは、さすがに立ち止まって少し考えてしまいましたが……。そして、語られていない部分もまあまああったので、総じて面白かったですが、若干消化不良気味でもありました。読み終えた後、気になってネットで検索してみました。例によって考察サイトがたくさんありますね。あと、リストの「巡礼の年」をYouTubeで聴いてみました。思ったより暗めの曲で、巡礼というものは厳かなものなのだと痛感しました。


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