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『ジャーロ』No.47/祝・日本ミステリー文学大賞受賞! 皆川博子 正統にして異端の女王

『ジャーロ』No.47
祝・日本ミステリー文学大賞受賞! 皆川博子 正統にして異端の女王

出版社:光文社
発行年:2013年4月25日

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 段ボールから取り出しました。9年前にタイムスリップです。ミステリ好きを公言している身ですが、皆川博子さんは『開かせていただき光栄です』で第12回本格ミステリ大賞を受賞するまで、恥ずかしながら知りませんでした。また、大学時代、皆川博子さんの作品が好きな友人がいたっけなあ、と少し感慨深く思いました。元気にしているかしら。……で、本誌は、古野まほろさんの「外田警部、あずさ2号に乗る」目当てで買ったような気がします。この短編は、『外田警部、カシオペアに乗る』に収録されていて、私の手元にあります。だから古本屋に売る前に私が読むべきものは、法月綸太郎さんのインタビュー記事と評論しかないです――個人的見解なので異論は認めます。
〇法月綸太郎 インタビュー「途中でクイーンに鞭を入れられました」/インタビュアー佳多山大地
 2012年12月に『犯罪ホロスコープⅡ 三人の女神の問題』が刊行されたので、その記念としてのインタビュー記事のようです。このいわゆる〈星座シリーズ〉は読んだなあと懐かしくなりました。

法月 (前略)クイーンがラジオドラマを書いていた時期と、横溝正史が捕物帖(人形佐七シリーズ)を書き始めた時期がほぼ同じなんです。国が違うので同列には論じられませんが、先日亡くなられた石上三登志さんが”捕物帖というのは時代小説の器を借りて、〈シャーロック・ホームズのライバルたち〉の日本的な継承という欠落していた作業をやり直したものである”と評価していて、今回の星座シリーズはホームズ物とパズル小説の黄金時代のあいだを埋める作業だったという意識もあるんです。横溝が捕物帖でやったことを現代物の短編シリーズでやったら風俗小説寄りになったとも言えます。

 本を読むとき意識はしないのですが、エラリー・クイーンと横溝正史が同時代に生きていたと思うと、ミステリファンとしては「すごい時代だったんだ」と改めて震えます。もう一度『犯罪ホロスコープ』を読みたくなったインタビュー記事でした。

〇〈MYSTERYランダムウォーク〉第16回 毒殺と確率論的世界
 法月綸太郎さんの評論です。評論なので、私が読んでいない作品も無慈悲にネタバラシされるわけですが、途中に出てきた未読の箇所だけうまくネタバラシを回避できたので、9割方読むことができました。嬉しい。毒殺ミステリの特徴として、法月さんは2つ挙げています。1つ目は「潜在的は犯行の多数性」が挙げられること、もう1つは「郵便との相性がいい」ということらしいです。この評論に多く言及されているバークリーの「偶然の審判」または『毒入りチョコレート事件』がまさしくそれらに当てはまります。また、『時間ループ物語論』(浅羽通明)には「ループものの起源」のひとつとして、『毒入りチョコレート事件』への言及があるそうで、今度読んでみようと思いました。

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