『コロナ後の世界』

『コロナ後の世界』

著者:大野和基(編)

出版社:文藝春秋 (文春新書)

発行年:2020年7月20日

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第1章 独裁国家はパンデミックに強いのか/ジャレド・ダイアモンド

第2章 AIで人類はレジリエントになれる/マックス・デグマーク

第3章 ロックダウンで生まれた新しい働き方/リンダ・グラットン

第4章 認知バイアスが感染症対策を遅らせた/スティーブン・ピンカー

第5章 新型コロナで強力になったGAFA/スコット・ギャロウェイ

第6章 景気回復はスウッシュ型になる/ポール・クルーグマン

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 本書は当初、〈二十一世紀が半ばに向かうにあたり、世界と日本の行く末を問う〉(p.200)ために、知識人6名にインタビューしていたそうです。それが、新型コロナウイルスによるパンデミックが起こったため、急きょ追加取材を申し込んだとのことです。

 私は本書を買うとき、全員知らない外国の方だなあ、ぜんぶ読みきれるかしらと不安でした。しかし、「ジャレド・ダイアモンドさんは『銃・病原菌・鉄』を書いた人なんだ! リンダ・グラットンさんは『ライフ・シフト』の方か! それぞれ知ってる!」とテンションが上がったので、問題ありませんでした。むしろ、『ライフ・シフト』は買ってはいますが読んではない状態だったので、すぐ読むことができるように机に置いときました。

 数か所貼った付箋のなかで、特に印象に残ったのは、第4章のスティーブン・ピンカーさんの言葉でした。〈あるリスクを現実的な脅威として実感させるには、統計やデータよりもシリアスで具体的なケースのほうが有効です。たとえば新型コロナウイルスの危険性を伝えるには、死亡者数や致死率などのデータを並べるよりも、たった一人の有名人が感染することのほうが効果的です。〉(p.128)という個所に思い当たることがありすぎて、ハッとさせられました。「利用可能性バイアス」と呼ばれるバグが関係しているそうです。振り返ってみますと、そもそも新型コロナウイルスに限らず、テレビやネットなどのニュースを見ていると、メディアが誘導したい感情にもっていかれるときが多々あるなと考えました。多かれ少なかれ、バイアスの影響を受けているのか……

 また、編者の大野さんの「あとがき」も良かったです。6名のインタビューを通じて、印象的なことがあったと書かれています。それは、この現状、ポジティブな側面を見出すとしたら〈私たちに深く考えるきっかけを与えてくれたこと〉(p.201)だそうです。当たり前と言えば当たり前ですが、私はそれが平常時でもできていませんでした。だから、最近はもっと現状を知ろうと、書店で新型コロナ関連のコーナーを回るようになりました。テレビやネットなどのニュースを流し見するのではなく、能動的に本からも学ぼうと思っています。それが深く考える一端になれば、と考えています。

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