『卒業したら教室で』

『卒業したら教室で』

著者:似鳥鶏

出版社:東京創元社(創元推理文庫)

発行年:2021年3月19日

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 似鳥鶏さんの小説に出会ったのが、大学生の頃でした。デビュー作である『理由(わけ)あって冬に出る』が2007年刊行なので、時期的に2作目以降が出たときに書店で手に取ったと思います。『さよならの次にくる〈卒業式編〉』『さよならの次にくる〈新学期編〉』(どちらも2009年刊行)まで読んで、そこらへんで大量生産した学園ミステリ(もどき)とは違う作風で、一気に似鳥さんのファンになりました。(文庫本からデビューしたので、単行本で初めて発売されたときは感慨深いものがありました。何様目線やねん。)その〈市立高校シリーズ〉の最新刊が5年ぶりに出るということで、それを知ったときすごい嬉しかったです。葉山君や伊神さんとは本当にご無沙汰だったので、読み始めは妙な緊張感(彼らの空気感に触れるのが久しぶりで今の自分にあうのか若干不安だという感情)がありましたが、柳瀬さん!のおかげでぐんぐん読み進めることができました。ただ、帯に〈柳瀬さんの卒業式まで あと3日〉と書いてあるので、一抹の寂しさもありました……。このシリーズの醍醐味は、ネタバラシにならないように書くのが難しいですが、強いて言うと①「学校」という限定された舞台設定でいくつものトリックを仕込み続けていること、②「学校」と言う枠に収まらない展開に突如なるその驚きを楽しむこと―—だと個人的に思います。本書もそうです。目次を見てまず驚きました。具体的に書くとその驚きが激減するので書きませんが。「あれ???」と思い、読んでいくうちに合点がいきました。とにもかくにも、本作もすごい良かったです! やられました! ……といいますか、正直なところ、今までのシリーズ作品の内容がほぼ忘れているので、時間を作って1作目から順に読んでいこうと考えました。

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