『新型コロナから見えた日本の弱点 国防としての感染症』

『新型コロナから見えた日本の弱点 国防としての感染症』

著者:村中璃子

出版社:光文社 (光文社新書)

発行年:2020年8月30日

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 今まで8冊ほど新型コロナ関連の新書を読みましたが、「国防」という視点で切り込んだ内容は初めてでした。むしろ、頭の片隅にもそれに対する考えが無かったので、いかに無関心だったのかと気づかされました。自分の身近な事象ばかり囚われていたことが浮き彫りになったので、がつんと頭を殴られたような感じです。読んで良かったです。

 本書の狙いが〈はじめに〉で書かれています。〈日本や諸外国の感染症への備えや対策を「国防」の観点から書いた本だ。新型ウイルスによるパンデミックを、医学や科学、せいぜい経済の問題としてしか考えていなかった人たちにも新しい発見があればと願っている〉(p.15)とのことです。つまり私は、まさに著者が想定したターゲットど真ん中の人でした。今にして思えば、テレビのニュースで各国によるワクチン戦争の話が挙がっているのを流し見していましたが、あれも諸外国による国防の一つだったのかと。あの時、早くワクチンができるといいなーという、お気楽な感想しか持たなかった私は平和ボケそのものでした。お気楽といえば、WHOと中国の関係、それに対するアメリカの動き……その経緯も初めて真正面でちゃんと知りました。日本が都合の良い人みたいに扱われていることも。それに、国連にもお役所事情があることに驚きました。

 また、バイオセーフティレベル(BSL)という用語も初めて知りました。扱うことができる病原体を4段階にレベル分けされているそうです。日本にも、一番レベルの高いBSL-4を取り扱うことができる施設があるにはあるということも初めて知りました。それに対する紆余曲折も初めて知りました。新型コロナは生物兵器にならないことも初めて知りました。初めて尽くしです。

 第5章の〈パンデミックの予行演習、エボラ出血熱を振り返る〉を読んだのですが、まず自分自身で2014年を振り返ってみても、ほぼほぼ覚えていませんでした。我ながら衝撃でした。当時は他人事としてニュースを流し見していたから、記憶に残らなかったに違いないです。そういった感じで本書の章が変わるたびに、いろいろ気づかされて、第6章の頃にはボコボコに殴られてダウン寸前でした。本当に読んで良かったと思いました。

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