『月と太陽の盤 碁盤師・吉井利仙の事件簿』

【ネタバラシはしておりません】

『月と太陽の盤 碁盤師・吉井利仙の事件簿』

著者:宮内悠介

出版社:光文社

発行年:2016年11月20日

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 以下、あらすじ。

 吉井利仙は名うての碁盤師。使用する木には強いこだわりがあり、一年の大半を山を渡り、木を見て暮らしている。人呼んで「放浪の碁盤師」。十六歳ながらプロの囲碁棋士である愼は、利仙がかつて棋士だったころの棋譜に惚れ込み、師と慕って行方を追いかけている。囲碁をめぐる宿命に取り憑かれたような事件の数々は、ふたりに何をもたらすのか?

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 本書の探偵役は、碁盤師。初めて聞く職業です。それに加えて、帯に〈日本SFの未来を担う麒麟児がはじめて挑んだ本格ミステリ〉と書いてあったので、二重に惹かれて本書を買いました。あと、昔、「ヒカルの碁」のマンガを読んだしアニメも見たなあと懐かしい気持ちにもなりました。

 全部で6編収録されています。

「青葉の盤」➡そもそも碁盤がどういう風に作られるのかが知らなかったので、碁盤そのものの説明が興味深かったです。利仙のある謎を解く姿勢をみて、ある種の優しさを感じました。

「焔の盤」➡なにをもって偽物の碁盤なのか……。みんな一筋縄ではいかないなと思いました。

「花急ぐ榧」➡贋作師の独白。いろんな人の関係が絡み合っていて、これが年を重ねることなのかと。苦い味がするホワイダニットでした。

「月と太陽の盤」➡登場人物一覧! 見取り図! と静かに興奮しつつ読み進めました。

「深草少将」➡伝承はおもしろいです。本書のなかでは少しテイストが違いました。

「サンチャゴの浜辺」➡これまたテイストが変わりました。それにしても、囲碁とミステリで、こんなものまで書けるのかと……。脱帽です。

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