『三つの悪夢と階段室の女王』

【ネタバラシはありません。】

『三つの悪夢と階段室の女王』

著者:増田忠則

出版社:双葉社

発行年:2017年5月21日

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 第35回小説推理新人賞を受賞した「マグノリア通り、曇り」を含む4編が収録されています。帯に〈日常にひそむ底知れぬ闇と狂気!〉と書かれているように、どのお話も何かしらの狂気がにじみ出ていました。登場人物のほとんどが、いわゆる「いい人」ではなく、何かしらの影やら負い目やらがあって、読んでいてホッとする瞬間なんてありませんでした。良いエンタメです。むしろ、私自身の嫌な部分・ずるい部分を誇張していくと、なれの果てが本書に出てくる彼らになると思うので、一方的に拒絶するのも違うよなあ、と思いました。本書の物語が私の日常と地続きのように感じるからかもしれません。日常に悪意が侵食していく展開が、うまい。1編目の「マグノリア通り、曇り」を読み終えた後、思わず「えぐいなあ」と思ってしまいました。日頃使わないように注意している若者言葉を使ってしまうほどの心理状態でした。残りの二つの悪夢も、気持ちが暗くなるほどの面白さでした。「夜にめざめて」は、ニート・通り魔・自警団の三題噺で人間が怖くなりました。「復讐の花は枯れない」は執念深さが怖かったです。そして、「階段室の女王」。踊り場に女性が倒れているのを「私」が発見するところから始まるのですが、展開が読めなくてハラハラしました。

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