ありがとう『アイカツフレンズ!』(1年目)+傑作エピソード10選

『アイカツフレンズ!』の1年目全50話の放送が終了した。
過去作が持つ優しく豊かな世界を正しく引き継ぎながら、独自の試みも多く成されたこの作品は、『アイカツ!』が未来に向かって前進し続ける女の子たちを描き続けた作品であったことを再認識できる、『アイカツ!』シリーズの最新作に相応しい作品だったと思う。

とりわけ1年間を通して描かれたストーリーラインの一貫性と淀みの無さはシリーズでも屈指のもので、過去作と比較しても最も人に勧めやすい作品になっていると思う。また「フレンズ」という、親友でもライバルでも仕事上の相方でもあり、しかし描かれ方の文脈としては“恋人同士”に最も近い概念の提案は、これまでのシリーズでも描かれてきた“型にとらわれない絆の在り方”に名前を与え、1年を通して深く言及するためにとても有効だったものと考える。名前を与えたことで取りこぼしたものもきっとあるが、それについては2年目やまた次のシリーズで何が描かれていくかに注目していく所存だ。
願わくば本作が提示した「フレンズ」という概念が、親しい誰かとの関わり方に悩む人々に“救い”をもたらすことを望みたい。

作画などの点で過去作より少々貧弱さが目立った、楽曲の多様さに欠けていた、ナビAI“ココ”を主軸としたエピソードの(メインストーリーの完成度が高いが故に一層目立つ)「志半ば感」など、一部今後のシリーズにすら影を落とす難点もあったが、いまは「アツいアイドル活動」が素晴らしい物語で以って続いている喜びを噛み締めていきたい。

そんな本作の1年間、全50話の軌跡の中から、特に心を打たれたエピソードを10話に絞って、感想を述べていこうと思う。完全な自己満足企画だが、これがまた誰かにとって『アイカツフレンズ!』に興味を持ったり、本作の良さを再発見する切っ掛けにでもなったりしたら幸いだ。多少湊みお贔屓のエピソードチョイスとなっていることには目を瞑ってほしい。

『アイカツフレンズ!』傑作エピソード10選

第3話 「ビビっとインスピレーション」
脚本:久尾歩 絵コンテ:布施木一喜・五十嵐達也
演出:山本恵 作画監督:橋口隼人・吉田和香子

ストーリー展開、PRドレスのモチーフ、楽曲とあらゆる要素が湊みおというキャラクターのディテールを掘り下げており、本作に心からの信頼を寄せる切っ掛けとなったエピソード。あいねとみおが互いを支え合う最高のフレンズになるであろうことがたびたび示唆されている点にも注目したい。

第11話 「告白はドラマチック」
脚本:大知慶一郎 絵コンテ:田頭真理恵
演出:山本恵 作画監督:宮谷里沙 中島里恵

ピュアパレットいちゃラブ3部作の第1部にして、ここまで直球の“告白”はシリーズを通しても劇場版スターズ!以来であろう序盤の一大カタストロフ。あいねの写真に向かって告白練習をする湊みお、勝ち誇った表情で流し目を送る湊みお、テンパって格好がつかない湊みお。いろいろな湊みお。

第15話 「アイチューブ☆シンデレラ」
脚本:大知慶一郎 絵コンテ:久行宏和
演出:鈴木萌 作画監督:大川貴大 秋津達哉

みんな大好きツカサちゃん活躍(?)回。友希あいねが自分だけのアイドル適性を見いだす切っ掛けがコミカルな芝居と共に描かれた。キャラクターの一挙手一投足が大変魅力的で、とりわけラストにあいねが自分たちの輪の中にみおを引き入れるシーンはみおにとっても転換点であったことを思わせる。

第23話 「叫ぶ、瞬間」
脚本:京極尚彦 絵コンテ:京極尚彦
演出:京極尚彦 作画監督:秋津達哉

ナンバーワンエピソードに選ぶ方も多いであろう京極尚彦a.k.a.ラブライブ!監督無双回。天候を完全に掌握した大胆不敵な演出がストーリーと完全にシンクロ、精細な表情作画も相まった終盤のカタルシスは圧巻で、高揚し、紅潮した舞花から目が離せない。フレンズとしての在り方も舞エマならでは。

第31話 「伝説の101番勝負!」
脚本:柿原優子 絵コンテ:馬引圭
演出:徳本善信 作画監督:秋津達哉 岩崎成希

ピュアパレットいちゃラブ3部作の第2部。隣に並び立つ者同士、一度は全力でぶつかり合うべき時がある! みたいなシチュエーションなんだけど、終始楽しそうなおふたりさんの温度感も『アイカツフレンズ!』らしさか。クライマックスの瞬間最大顔面偏差値は歴代最高を記録。ギネスにも乗った。

第36話 「波乱のランウェイ!」
脚本:守護このみ 絵コンテ:安藤尚也
演出:蓮井隆弘 作画監督:橋口隼人 小川玖理周

みおの総合プロデュースによるファッションショー回。華やかなイベントの舞台裏描写、彼女たちの機転によるトラブル回避、アイドルになりたい女の子への優しい手ほどきなど、憧れの対象たるプロフェッショナルとしてのアイドルの魅力が詰まったエピソード。守護脚本への信頼はストップ高に。

第40話 「Believe it」
脚本:大知慶一郎 絵コンテ:久行宏和
演出:山本恵 作画監督:秋津達哉 岩崎成希

白百合姉妹のトンチキで可愛らしいやり取りが、勝負の世界の厳しさを描く後半の展開へしっかりと結びつくことで、作品が持つ豊かさを1話で体現。敗者の胸の内を描き出す演出の技巧や、アイカツ世界の勝負のロジックとも呼応するサブタイトルも含め、DFカップ編屈指の味わい深いエピソード。

第44話 「チョコっとミントな告白」
脚本:成田良美 絵コンテ:安藤尚也
演出:蓮井隆弘 作画監督:橋口隼人 渡辺健一 石川恵理

過去作と比較して男女の絡みが物足りないってことすら忘れかけてた1年目終盤にブチ込まれたナックルボール。女女で固定することで密に描かれてきた関係性が、ひとたび解き放たれ男子とのやり取りを描写されると予想以上にドキドキさせられることが判明。アイカツフレンズ油断ならねぇ……

第46話 「月から来たプリンセス」
脚本:大知慶一郎 絵コンテ:山地光人
演出:山地光人 作画監督:大庭小枝

想像力や創造性が現実を変える力を得る物語に弱いので、さくやの「設定」のルーツと、彼女たちが最初から「リフレクトムーン」であったことが明かされるこの話は大変刺さった。「あこがれは永遠に」の変奏とも取れるが、フレンズならではの相互作用が主軸にあるため質感はかなり異なっている。

第50話 「そこにしかない未来」
脚本:大知慶一郎 絵コンテ:青木康直
演出:徳本善信 作画監督:岩崎成希 三橋桜子 石川恵理 渡辺健一
1年目のラストエピソードにしてピュアパレットいちゃラブ3部作の第3部。僕も女子中学生同士の口喧嘩が大ホールでコンテンツとして提供される世界に住みたい。「あれはふたりだけの秘密なのに! あいねのバカ!!」うちら何見せられてんの? ミライさんの指パッチンで笑い死んだ。


キリのいい10エピソードに絞るために泣く泣く除外したお気に入りエピソードとしては、第8話 「みおのCM大作戦!」、第9話 「勇気のメロディ♪」、第41話 「ラブミーゾーンを解き放て!」辺りが挙げられる。

すでに2年目“かがやきのジュエル編”の初回となる第51話も放送され、ちょっとまだ向こう1年に渡るビジョンが見えてこないためしばらく静観する形となりそうだが、引き続き楽しんでいく所存だ。

今後ともよろしくお願いいたします。

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