2人声劇『民をとりもどせ！』

民をとりもどせ！

チャン・ハルムネ
ナキナ・パンユン

チャン(N)数百年前の出来事だ…人は戦争で大量の核兵器を使用した。
海は枯れ、大地は荒廃した。
誰もが人類は滅亡すると思っていた…

ナキナ(N)しかし、人類は滅び無かった。
地下に逃げ込み、生き延びていた。
しかし、世界は血と暴力の…弱肉強食の世界へと変貌した

チャン(N)そんな世界でも人が滅亡しないのは、ひとつの光があるからだ…そう、愛と言う光が…

ナキナ｢チャン！何故あなたと闘わなきゃいけないの！｣

チャン｢黙れ！俺らは闘うしかないんだ！…それは変えられない！｣

ナキナ｢2人で愛し合ったあの時間は…私の中では永遠の時間だったのに！｣

チャン｢あの時間は続くものだと思っていた……しかし、対立する事を選んだのはナキナ！お前だ！｣

ナキナ｢私は子供たちが笑いながら過ごせる地を作りたかっただけよ！｣

チャン｢その意思に賛同した者が俺の大切な民を虐殺したのだぞ！女子供、年寄り関係なく！｣

ナキナ｢その報復にあなたも私の大切な人達を殺した！｣

チャン｢民の安寧の為に！｣

ナキナ｢子供たちの未来の為に！｣

チャン｢俺は！｣

ナキナ｢私は！｣

チャン｢おぉぉぉぉぉぉ！｣

ナキナ｢はぁぁぁぁぁぁ！｣

チャン(N)子供の為、民のためお互いの譲らない気持ち…あの時、子供に優しく笑いかけるナキナを見た時、未来を願った。

ナキナ(N)民の為に常に先頭立ち希望を与え続けるチャンを見て私は未来を見た。
だからこそ、あの愛し合った時間は永遠と感じた。

チャン(N)俺を慕う民の為に…だけど、俺は

チャン｢ぐはっ…｣

ナキナ｢なんで！今の一撃、あなたなら避けれたでしょ！それを何故…｣

チャン｢お前との……あの時間が頭をよぎってな…｣

ナキナ｢生き残るのは…あなたで良かったのに……｣

チャン｢俺とて人の子だ…あの……可愛い子供たちの…笑顔を……愛する人の子を…殺したいと…願う男はいない｣

ナキナ｢あなた…私なんかより民に愛されていたじゃない……私の想いよりも…もっと、沢山の人に…｣

チャン｢だからこそ…だ｣

ナキナ｢…え？｣

チャン｢俺は…俺の民にしか……思いに応えることは出来ない…しかしお前は違う…ナキナ……お前はその慈愛を周りに向けられる…俺よりも…もっと広く…｣

ナキナ｢チャン……｣

チャン｢俺の愛を…ナキナに託す……だから皆を、ナキナは…幸せに……なっ…｣

ナキナ｢チャン！チャン……｣

ナキナ(N)あれから数年後…私はチャンの思いと共に、子供と皆が笑いながら過ごせる地で生きている。
チャン…今私は幸せだよ。