2人声劇『同盟の果て』
同盟の果て
芽々
杏次郎
芽々「杏次郎様と出会えた奇跡に」
杏次郎「芽々に会えた事を大切に」
杏次郎(N)1865年…私は剣の道を極めんと薩摩藩に身を置いておりました。
この時期は薩摩藩と長州藩との対立が激化する一途を辿っていて、規模は小さいながらも戦が続き、私も警戒の為に薩摩にある山の中を歩いておりました。
芽々(N)長州の産まれで、私は忍びの一家に生を受けました。
1865年、薩長の対立が激化する中、私のような中忍は薩摩の情報収集として単身で町へ向かうべく薩摩の山の中を進んでおりました。
芽々「もう少しで薩摩の町か…予定通りに行ったか…ん?あれは…」
杏次郎「くそ…まさか自陣の忍びの罠に当たるとは…はぁ、参ったな…痛っ!」
芽々「まさか、自陣の罠に?
やれやれ、とんだ間抜けな侍もいたもんだ……おい、大丈夫か?」
杏次郎(N)その女は芽々と名乗り私を助けてくれた。
山に山菜を取りに来た時に見かけたと言い、手当をして町まで肩を貸してくれた。
礼をしたいと言ったが彼女は足早に去っていった。
その時に見せた笑顔は今でも覚えている。
彼女が長州の忍びだという事も勘づいてはいた。
芽々(N)何故わたしは杏次郎殿を助けたのか…罠に嵌り、苦しんでいるあの方を見たら自然と身体が動いていた。
たとえ自分の身分がバレても…
それから時が経っても、あの方を助けた時の笑顔が忘れられない
芽々(N)1866年、3月7日…坂本龍馬・西郷隆盛・桂小五郎の3人による『薩長同盟』が結ばれた。
私は直ぐに藩主に薩摩に住めるように嘆願。
薩摩へと出発した。
杏次郎(N)薩長同盟が結ばれた事を知った俺は、心の中で『またあの娘に会えるのでは…』と思っていた。
またあの山で…
杏次郎「予想よりだいぶ早かったのだな…」
芽々「薩長同盟が結ばれたと情報が入った時に、直ぐに嘆願しましたから」
杏次郎「そうか…拙者も長州に向かおうと嘆願書を出したのだが叶わずだったのだ」
芽々「そうですか…杏次郎殿はこれからどうなさるつもりで?」
杏次郎「その事だがな…もう1つ嘆願書を出ておるのだ」
芽々「もう1つ?」
杏次郎「あぁ…想い人と再会出来た時には夫婦(めおと)として道場を開く許可を…な」
芽々「め、夫婦⁉️ま、まさか…その嘆願書は…」
杏次郎「めでたき事、として受理されたぞ」
芽々「そうか…そう、か……じゃあ今度から杏次郎殿を旦那様と呼ばなきゃならないな」
杏次郎「はっはっは…そうかしこまるな!
お前でも杏次郎でも構わんよ」
芽々「…この先どう国が動くか分かりませんが、2人で一緒なら…」
杏次郎「きっと良い国になる…薩摩と長州が手を組めたのだからな」
芽々「はい…杏次郎様、ずっとお慕いしております」
杏次郎「芽々…ずっと傍に」
芽々「いつまでも」
杏次郎「肩を並べて…」