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私のカメラはじめ『ヨコハマ買い出し紀行』

こんにちは、薄明です。

私が好きなものには写真やカメラ、詩や文字をはじめとして、いろんなものやことがあります。好きな本、好きな曲、好きな場所、好きだった時間…。その中でもやはり特別なものはいくつかあって(それでも、挙げていくと結構な数になるだろうなと思います)、そのひとつを書いておきたいと思いました。それはある漫画作品です。

『ヨコハマ買い出し紀行』

1994年6月から2006年4月までの月刊アフタヌーン(講談社)に連載されていた、芦奈野ひとし氏の作品です。コミックスはアフタヌーンKCとして全14巻、新装版全10巻が発行されています。私がこの作品に出会ったのは中学生か高校生くらいのときだったのですが、当時知り合いの大学生の方が好きな漫画に挙げられていて、興味をもって読んでみたらすっかりその世界にはまってしまったのでした。

近未来SFというジャンルではあると思います。少しずつ人類がこの世界で営みを終えていく、黄昏の世界――のちに『夕凪の時代』と呼ばれる――で、ロボットである主人公の初瀬野アルファは、ひとりCafe Alphaにてオーナーの帰りを待ちながら日々を過ごしていく、ざっくりと言うとそういうお話です。アルファとその周りの人々、そして遠く離れた人々らの生活を、静かに、穏やかに描いています。徐々に終わりに向かって変わっていく世界とうらはらに、人々に悲壮感はなく、ただ日々をゆったりとそして大切に過ごしていることが伝わってきます。この独特の世界観と、絵本を眺めているような一ページ一ページ、愛すべきキャラクターたち、劇中を流れる時間という「ふね」、郷愁感(のすたるぢあ)、どれもが今も昔も優しく読者を惹きつけてくれます。

ネタバレになっても面白くないので詳細は諸々伏せますが、思春期から完結時の成人頃、さらには今に至るまで、そのキャラクター…特にアルファが私に与えた影響はとても大きいものでした。ロボットという属性を与えられてはいますが、とてもそうは思えない人間らしさ、人間臭さと言ってもいいかもしれません、そういうものを持っています。いまも大好きなキャラクターです。(いや、子海石先生とかも大好き…言い出したらきりがないのですが)

この作品の劇中(KC2巻)でカメラが登場します。noteに書くということはカメラや写真に関係することだろうとは、読んでいる方ならご推察の通りだと思います。私が本当に最初にカメラや写真に興味をもったきっかけが、まさにこの作品だったのです。(実際に写真を趣味にはまったのは、就職後の話でしたが) ロボットであるアルファは、作中においては原則「いつかこの世を去っていく人間」と対比して、「姿はそのままにこの世界に残っていくもの」として描かれています。その長い生のなか、記憶や記録しておくものとしてカメラを贈られるエピソードがあり、それ以降「撮影する」ということ、またそれを軸としたおはなしは何度も登場します。

どのキャラクターの発言によってではなく、作者によって込められた、この世界におけるメッセージはどれもとても穏やかで、心に受け入れられていく響きを持っていることが多いです。私がこの14巻分の好きなところを挙げていくのは、無粋ですらありますので、是非ご自宅で過ごされる時間が多い今、手に取っていただけると嬉しいです。電子書籍版もあります。

私が撮る写真、私が写し取る世界や対象、その多くの根っこの部分というのが、この作品から受けたものと私の感性が入り混じって成り立っているということが、わかっていただけると思います。そのことに気づいたのは最近のことです。

ただなぞっているわけでもない、例えば私はアルファさんになりたかった、ココネになりたかった、おじさんに、子海石先生になりたかったというわけではない。けれど、この『ヨコハマ買い出し紀行』の世界そのものになりたかったというのはあるのかもしれません。あるいはそれを自分自身のうちに取り込みたかった。

本当に好きな作品なのです。

今も作品のファンの方はたくさんいらっしゃいます。私ごときがこうして紹介するまでもないくらい、多くの方がその作品や世界観、魅力について語っておられます。

私もこれからもいっぱい見て、いっぱい歩きたいと思います。

それでは。

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