あほ京大生③エロゲネズミ講男

今宵はほっそい三日月がきれいですね。皆さん有意義な一日は過ごせましたか?私は不毛な休日をエンジョイしました。

そんな今夜はあほ京大生シリーズを書きます。
①はこちら↓

番外編はこちら↓

前説としましては、私は森見登美彦の小説が好きなので京都が大好きです。そして実際京大生の、あの独特で偏屈な底なしのあほっぷりを尊敬かつ軽蔑しています。たぶん偉大な方もたくさんいるんでしょうが、あほばかりに出会うので京大生(男)はあほだと思ってます。すみません。とても好きです。

そして狸男、串カツ男の次に、本日紹介するあほ京大生は「エロゲネズミ講男」です。関係者各位みてるかーい!みないでー!


さあ、エロゲネズミ講男との出会いもマッチングアプリです(出会いがもうだめだよね)。エロゲネズミ講男はちょっと長いのでNくんとします。
Nくんは自撮りをしたことが無いのか、アプリにはすごい下からのアングルの顔写真が登録されていました。お茶碗に撮ってもらったん?
趣味は山登り。相当ひまそうだ。そして顔写真の撮り方といい絶対に陰キャだ。女耐性ないなこいつは。そしてこんなお茶碗アングルでも全然耐えうる顔をしている。チャラ男が苦手な私は普通に好みだったのでマッチングした。
そしてトントンと話は進み無駄な会話無く数日後すぐに会うことに。ちょっと怖かったが、私も好きでもない男と不毛なメッセージをするのはやだなと思っていたのでよかった。
大学終わりの平日、夕方の集合に。日本酒が好きと言うので、私も飲みたい!と言うと日本酒のおいしいお店を教えてくれた。ふむ。リードもしてくれるし良いではないか。私は好きでもない男と昼間にカフェで不毛な会話をするのはやだなと思うので好印象であった。

マッチングアプリで何度か人とお会いし醜態を晒しているが、会うときは本当に緊張する。慣れない。今回もどきどきしながら友達と通話し、待ち合わせ場所である新京極通の一角ででそわそわしていた。
そこにすっと現れるN君。不思議なことに、服装などを聞いていなくとも「現れたとき」に「あ、この人だ!」と直感で分かるものである。
そしてNくんもすぐに声をかけてくれた。「(薄情者)さんですか?」
「あ、はい!」
震える手を隠し余裕の笑顔を見せつける私。
しかし暗がりの中からNくんの顔が見えた瞬間、脳内で天変地異が起こりちゃぶ台が引っくり返りひいおばあちゃんの笑顔がうっすら見えた。

イ、イイイケメンやないかい!!!

清潔感のある紺色のシャツを羽織り、手ぶらで来たNくんは私の脳内事情も知らず会うなり
「芸大ですか?芸大ですよね?」
とやたら聞いてきた。プロフィールに書いていたので「あハイ…」と頷きながら店に向かう。

日本酒は非常においしかった。そして話も弾んだ。Nくんは積極的に話すタイプではないがたいへん聞き上手であった。そして二人ともあほ好きらしいことが分かり、知ってる限りのあほエピソードを語り合った。楽しい。またNくんの両親は芸大出身らしく、「あ、それで会ったとき芸大をすごい確認してきたのね」と納得した。
そしてNくんは京大の工学部ということを知った。京大の工学部にろくなやつを知らないが、Nくんは奇跡的に知的で勉学に励む真面目な学生なんだと信じ込んだ。
しかし、お酒が回り始めた頃何やら怪しい雰囲気になってくる。
「あの……いや、これはもうちょっと飲んでからにします…」
なにか言いたげなN君。
「え~なんですか?気になりますよ!」
「いや…ん…ちょっと……」
「なになに!私もう話すことないですよ!」
やんわり問い詰めると、Nくんは端正な顔立ちのままぽつりと言った。

「エロゲの…絵を描いてくれる人を探しているんです。」


あー、最悪だ。

「エロゲ?エロいゲームのこと?」
「あ、そう。今僕の友達というかルームメイトがエロゲをつくってて、あの、芸大の方なら描いてくれるかなって…」
「ルームメイト?寮とか入ってるの?」
「あ、そうです。」
「K寮?」
「え!あ、そうです。」

終わった…。
Nくんは元は知的で真面目な学生だったのかもしれない。しかし京大K寮とは学生の形をした魑魅魍魎の巣窟として有名な心霊スポットである。環境が悪すぎる。こいつの周りには間違いなく小津みたいなやつが蔓延っている。
しかし私はNくんを信じた。
「え~私はそんなにイラストとか描かないけど、油画の人とかで興味ある人いたら紹介しますね!」
私は下ネタなんて平気ですよ感を出し、ニッコリと微笑んで早急にその話題を終わらせた。

店を出る。
「そういえばマッチしてから会うまでのスピード感めちゃ早かったですね」
「え、そうなの!?はじめてだからよく分からなくて…でも寮の先輩に『メッセージは無駄だからさっさと会え』って言われて、、」
K寮内の狭く汚い一室で、男汁を流す暑苦しい先輩がNくんに教鞭しくさってる姿が目に浮かぶ。Nくんの同期も「そうだそうだ!」とガヤを飛ばす。そんな会議があったのかと思うとムカついてきた。
二軒目へゆく。

汚い居酒屋に入り、飲む。楽しかったがNくんが心を開き始め口数が増えるにつれ、あんまり話は面白くない奴だと気付く。微妙な下ネタエピソードを話され、「今の話何点だった?」と聞かれる。ほんとは20点くらいだったが「うーん…73点くらい?」と返すと「リアルやな…」と落ち込んでいた。
「持ちネタこれくらいしかないのに…。」
いや、おもんない下ネタほど冷めるもんないから持ちネタ変えた方がいいよ。

夜も更け、二軒目を出た。
まあまあ飲んで、私は木屋町通の柳に揺られながらぷかぷかしていた。
「帰ろうか」
「帰ろう、帰ろう」
ぷかぷかと歩く。
高瀬川の静かに流れる音がする。
柳の葉がそよそよと紺色の空に飛んでゆく。
ぷかぷかと狭い道を進む。
夜は涼しいなあ。
Nくんは立ち止まった。
「行く?」
なにが、と言う前にNくんが指さす方向を見る。
ぴかぴかと四角い窓が明るい洋館。
『HOTEL』のネオンサイン
躊躇い交じりの、自身の無さそうなイケメンの顔。

誰だよこの残念イケメンを生んだのは

私は笑った。
あはははははは
虚しくも京の夜空に己の笑い声が響く。

「行くわけないやろあほか!」

Nくんも「え、あ、そうだよね、あははは」と笑った。
「帰ろうか」
「帰ろう、帰ろう」
行き過ぎた木屋町通を引き返して、河原町駅のある広い通りへ出る。
たぶん、マッチングアプリはホテルに行ける。こういう手順を踏めばヤれる。マッチングアプリっていうのはそういうもんだとK寮のクソみたいな先輩にクソみたいな会議の中で教えられたんだろう。
Nよ、お前は元は真面目で勤勉なイケメンだ。モテないわけがないんだ。
入る大学を間違えたな。
K寮に入ったことが、お前の運の尽きだよ…。

N君と解散しほぼ終電で桂に帰ると、私はこの無念な気持ちを誰かに発散したくなり改札で友人Kを呼ぶ。
「いま暇?トリキ行こう」
「ん、いいよ。(狸男)も行くわ。」

深夜12時をまわる騒がしい鳥貴族の店内で、私は友人Kとその彼氏の狸男を前にしてうなだれていた。
「マッチングアプリの男、どうだったの。」
事の顛末を話す。
そして「エロゲの絵描いてって言われた…」と言ったとき、Kたちは顔を見合わせた。
「エロゲ?京大で?」
「なんか聞き覚えあるな」
「もしかしてそいつK寮?」
ああ…嫌な予感しかしない…。
「うん、K寮。」
京大工学部の狸男と、京大インカレサークルに属する友人Kは何やらボソボソ話し出す。「え、あれじゃない?」「〇〇らがやってるやつ?」「あ、それや」「うわあかん」「えらいこっちゃ」

「なに…。」

疲弊した私を気遣うような素振りを見せながら、友人Kは遠慮がちにとどめを刺しに来た。

「それK寮で最近はやってるグレーなネズミ講的なあれだよ…。」




己がイケメンという自覚が無く女性経験は無いが憧れはありしかし強く求めに行く勇気もコミュ力も無いけど受験勉強だけはできてしまったようなやつは、なんの武器も持たぬままにやすやすと寮に入るな!!!そこそこに異性交流をエンジョイし薔薇色の大学生活を送りたい陰キャはK寮に入るな!!!
そして芸大にも入るな!!!


私の現状好きな人はNくんみたいなやつじゃあありませんように!!!

じゃあね!!!アデュー!!!




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