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伝統産業への恩返し

私の仕事は、つまるところ、恩返しなのだろうと思うことがあります。

先般、先代の創業者が他界いたしました。
その形見を整理していると、驚くほど多くの工芸作品があり、なかには封も空けていないものもありました。

葬儀などでお会いした作家さんから、実は先代にお願いして作品を買ってもらっていたのだと教えていただきました。

先代は自分の損得関係なく、他人を気にかける人でした。
作家さんから作品を買っていたのも、応援する気持ちがあったのだと思います。会社を辞めていった元社員ですら気にかけ、折に触れて連絡したり、食事に連れて行ったりもしていました。

それは、先代なりの恩返しだったようにも思います。
金沢箔の文化を育て地域を代表する産業にし、社会的に成功者と認められる立場になりました。その成果を自分の贅沢に使うよりも、社会にもう一度、恩返しとして分け与えていくことを考えていたのだと思います。

私たちは金沢箔を事業の基盤としています。これは450年もの期間、多くの人によって育まれてきたものです。私たちのビジネスは、名も知らぬ数多くの職人たちによって、生み出されてきたものと言えるでしょう。

ですから、箔一は存在する限り恩返しをしていかなければいけません。
事業の発展を志すのも、より多くのものを地域に返していくためにほかなりません。

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