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変態

ここ最近、蚕が気になっている。
きっかけは春先に見に行ったビョークのライブだ。
人類が花や獣や虫になり、花が人類や虫になり、または全く新しい未知の姿に変わったり。
人類の変態をテーマにしたような演出が素晴らしかった。
特にTobias Gremmlerの映像。
日本的なアニミズムとは少し違い、すべての生の進化を見つめていくような視点。
変わってはまた戻る、その変態のシームレスなこと。
そこにビョークの歌声が混じり合う。
最高のショーだった。
あのライブを見てからというもの、私は変態したくてたまらないのだ。

蚕は幼虫から蛹を経て成虫になる。
見事な変態だと思う。
YouTubeで蚕の動画を探してみたら、約500頭の蚕の幼虫が桑の葉を食べる音を聞くという動画を見つけた。
森に降る雨のように、暖炉に燃える火のように。
俳句には「蚕時雨(こしぐれ)」という春の季語があるくらいで。
蚕のASMRは、人類の耳に心地いい。


蚕の成虫はなぜ何も食べないのですか。

こたえ
蚕は幼虫の間は昼も夜も食べ続けて、一生分の食べ物を食べます。
成虫になると子孫を残すことだけが仕事といえ、オスは交尾後2~3日で死に、メスは卵を約500つぶ産んで4~5日で死んでしまいます。
そのため、食べ物も幼虫の時に食べた分で十分です。

農林水産省HP 消費者の部屋より


蚕は家畜に分類されるらしい。
成虫になってからはなにも食べなくなり、数日しか生きない。
成虫の白くふわふわと美しい姿も、短い一生や家畜であることを思うとどうしてもかなしく見える。
それでも変態するのだ。
私は蚕に憧れている。
もし人類が変態できたら。
できるようになったら、なっていたら。
どんな姿になってみたい?

私は鼻のてっぺんから百合を咲かせたい。
そして顔いっぱい大きな大きな百合となって、山の奥深くに立っていたい。


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