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江戸時代の生地の切れっ端……《古裂帖》 @トーハク 東洋館

先日、東京国立博物館(トーハク)の東洋館を見て回っていたところ、(全く面識のない)若い男女と同じものを同じタイミングで見ていました。

女性が「何これ?」と興味もなさそうに、純粋に「これは何なの?」という感じで、一緒にいた男性に問いかけました。男性は間髪入れずに「わからん。なんやろね?」と、興味もなさそうに応えていました。

博物館って、そういうものですよね。今や生活に密着したものでは無い物が展示されています。その展示品を知っていたところで、何の特にもならず、知らずに生涯を終えても、何の損もありません。そういうものの集積なので、「何これ?」というものだらけです。

かくいうわたしも、興味のないものは、無理して見ることもありません。トーハクでいえば、その代表が、歌舞伎のコーナーであり、着物だったりします。

一方、前述のカップルと同じタイミングでわたしが見たものは、美しくて興味深い「古裂帖」でした。

《古裂帖》
《古裂帖》

写真を見てもらうと分かる通り、「なんじゃこりゃ?」というものですねw

何かとして使われていたけど擦り切れて使えなくなった生地の端を切ったり、なにかに仕立てた時に余った端切れを、アルバム(帖)にしたものです。ちなみに解説パネルには「掛け物の表具や茶入の仕覆として使われた後に、擦り切れて使用に耐えなくなったものを、丁重に装丁した」といったように記されています。

解説パネルによれば、特に「江戸時代の茶人たちに珍重された舶来の金襴緞子・錦などの断片(裂)をアルバムに仕立てたもの」なのだそうです。「茶の湯において、 有名な茶人や寺院などに由緒を持つ裂は、その由来とともに『名物裂』として尊ばれました」と。

なぜ、その《古裂帖》が、(主に中国や朝鮮半島など外国由来の品々が展示されている)東洋館に展示されているかといえば、「名物裂の多くは、主に元時代から明時代の中国やインド、イラン、東南アジアで製作され、日本に渡ってきたもの」であり「今回は、 元時代から清時代に製作された金襴・銀襴緞子・間道・錦・綴織(絲)をはじめ、日本の唐織やインド更紗など、さまざまな裂を含む」ものだからなのでしょう。

「茶人はこのような裂にも付箋をつけ、丁重に装丁しました。こうしてつくられた古裂帖は、名物裂の鑑賞の手引きや、新たに入手した裂を判別する参考とされ、人々の裂に関する知識を高めた」そうです。

どれもこれも、きらびやかな生地ですよね。これらの生地で作った完成品に関しては、華美すぎて、わたしの好みではない気がします。それでもこうして、ちょっとずつ見る分には、とてもキレイだなって思うから、不思議なものです。

ちなみに、1カ月以上前に展示されていたものなので、今は既に展示期間が終わってしまっているかもしれません。印象としては、不人気コーナーだったのですがw ほかにも《古裂帖》が所蔵されているのなら、見てみたいものです。

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