見出し画像

インドネシア・ジャワに伝わる影絵芝居「ワヤン・クリ」の人形が美しいです@東京国立博物館

東京国立博物館トーハクの東洋館の地下1階をふらりと歩いていたら、鮮やかな色で彩色された操り人形が展示されていました。インドネシアのジャワ地方の影絵芝居、「ワヤン・クリ」に使われる伝統的な人形なのだそうです。

その「ワヤン・クリ」は、10世紀頃にインドネシアに伝えられた、古代インドの叙事詩『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』が、14〜15世紀に影絵芝居で演じられるようになったものです。

「ワヤン」は「影」、「クリ」は「皮革」という意味で、それぞれの人形は水牛の革から切り出され、細かいノミで細部を膨りぬいて、鮮やかな彩色をほどこされています。また、人形を動かすための棒も、水牛の角で作られています。

ダランと呼ばれる人形使いは、登場する人形をすべて一人で動かして、セリフを語り、そして伴奏のガムランに演奏の指示も下すそうです……とっても忙しい……。

先述のとおり「ワヤン・クリ」は、インドの叙事詩である『ラーマーヤナ』や『マハーバーラタ』、インドネシアの英雄物語などを題材としていますが、 決まった台本があるわけではなく、細かなストーリーや台詞などはそのつど語り部であり人形遣いでもある「ダラン」によって即興で語られます。しかも、その上演時間が6〜8時間と、半端なく長いです。

どんなストーリーだったか……というと、途端にネット上の情報が少なくなるのですが、日本ワヤン協会のホームページには、さすが、いくつかの物語の概要が記されていました。

トーハクには、田枝豪さんやダナルトさん、そして今回展示されている松本亮さんから寄贈された人形が収蔵されています。今回のは21世紀と、最近作られたもの。そのため、とても色が鮮やかですね。

「なぜ影絵なのに、人形がカラフルなのか?」という疑問に、日本ワヤン協会のホームページには、次のように記されています……「ワヤンがもともと、白い幕に影を映して演ずるものではなかったから」と。

「ワヤン」は、記録上でも10世紀にまで遡れるといいます。当初のワヤンは、「ワヤン・ベベル」と言われ、絵巻をくりのべて、物語っていくものだったそうです。音楽付きの紙芝居のような雰囲気だったんでしょうか。

その「ワヤン・ベベル」は16世紀半ばまで盛んに上演されていたのですが、15世紀半ばくらいになると、影絵となる「ワヤン・クリ」がトレンドになっていきます。ただし「ワヤン・ベベル」の影響が、「ワヤン・クリ」にも色濃く残り、人形も彩色されているのだといいます。

ちなみに日本ワヤン協会は、トーハクに人形を寄贈した松本亮さんが、主宰して今に続いています。同氏は『ジャワ影絵芝居考』や『ワヤン ジャワの影絵芝居』、『ワヤン人形図鑑』、『ジャワ舞踊バリ舞踊の花をたずねて その文学・ものがたり背景をさぐる』などの著書を残しています。2017年3月9日に死去。享年90歳。

日本ワヤン協会のサイトを見ていると、東京などでは定期的に、様々な場所で、ワヤンが上演されているようです。ちょっとだけ観てみたい気もしますが……もうちょっとね、落語みたいに軽い気持ちで観られると良いんですけどね……今度、機会があったら観覧してみようと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?