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「チベット仏教の美術」【東京国立博物館】

東京国立博物館では、平成館にて9月19日まで「チベット仏教の美術〜皇帝も愛した神秘の美」を開催しています。

「チベット仏教の美術〜皇帝も愛した神秘の美」が9月19日まで開催される

インドからチベットに仏教が伝わったのは7世紀のこと。以来チベットでは「インド仏教を忠実に継承しながらも独自の発展をみせ、洗練された仏教文化が栄え」てきたといいます。その影響は、モンゴルや中国などでも見られます。

また、鎖国から開国へと向かい、外国への興味を著しくしていた明治期の日本人は、その興味をチベットへも向けていました。よく知られる大谷宗瑞そうずいを中心とした大谷探検隊に先立つこと数年、日本人として初めて、当時鎖国していたチベットを訪れた密入国したのは、黄檗宗おうばくしゅうの僧侶、河口慧海えかいでした。

東京国立博物館の今回の展示では、河口慧海えかいがチベットから持ち帰ってきた「絵画・彫刻・工芸・書跡の各分野を代表する優品」を、あわせて展示されています。

チャクラサンヴァラ父母仏立像ぶつりゅうぞう<中国・チベットまたはネパール・15〜16世紀>

男女の仏が抱き合う姿で表される父母仏(ヤブユム)は、チベット仏教に特徴的な仏。インドでの女神信仰の高まりを受けて、男性の仏が妃と交わることで多数の仏たちを生み出すと考えられました。|守護尊
《イダム》と呼ばれ、絶大な力をもつ仏として信仰されます。

説明パネルから


ヴァジュラバイラヴァ父母仏立像ふぼぶつりゅうぞう<清時代・17〜18世紀>

「死神のヤマをも滅ぼすというヤマーンタカのうち、『恐るべき忿怒尊』を意味する仏。水牛の頭に呪術的な道具を持ち、鳥獣や神々を踏みつけながら、妃のヴァジュラ・ヴェーターリーを抱擁する男女合体の姿を表す。最上段の頭は文殊菩薩とされ、倒した敵を浄土へと導くといいます」(説明パネルから)

ヴァジュラバイラヴァ父母仏立像ふぼぶつりゅうぞう<清時代・18〜19世紀>

|陀羅尼
《だらに》と思われる巻物を軸として、土で基本的な形を作り、さらに木や鉄を心(芯?)として、木粉や漆を混ぜ合わせたペースト状の乾漆で表面を成形している。台座にも多数の短い巻物や紙束、米などが埋め込まれており、丁寧な製作工程がうかがえます。

説明パネルから
河口慧海請来しょうらい風俗資料

河口慧海えかいがチベットから持ち帰った資料からは、その視野の広さが伺えます。とりわけ当時現地で使用されていた女性用の装飾品や硬貨、鉱物、宝具類を、自ら3箱に整理した風俗資料は、その特徴と呼べるものです。1回目の旅行後に開催した展示会に出品されました

説明パネルから
河口慧海請来しょうらい風俗資料
河口慧海請来しょうらい風俗資料
河口慧海請来しょうらい風俗資料
河口慧海えかいが持ち帰った白檀材に、交流のあった高村光雲が仏像を彫刻したもの
背面には「贈呈 河口慧海上人 高村光雲喜寿記念ノ為 釈尊ヲ奉彫 昭和三年中秋」と銘文が刻まれている。


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