見出し画像

詩 半月

今日は半月。

満月や三日月と違い、

半分に切られたように見える

半月は、

落ちたもう片方を

探しているようで、

何か妖しさを感じる。

夜の街を車で走る。

昼間の喧噪は、かき消され、

街はガランと静まり返る。

街頭や家の明かりで照らされた、

誰もいない道を真っすぐ走ると、

なぜか後ろが気にかかる。

時折、

ミラーで後ろをそっと確認し、

何もなくてホッとする。

僕の記憶の底にある、

夜の闇はもっと濃い。

本当に何も見えなくて、

暗闇に目が慣れて、

微かに浮かび上がる、

気配以外は、

全てが闇に包まれる。

空に月のある夜は、

明るく夜を照らすけど、

見えないものをも照らしそうで、

何か少し怖くなる。

夜の生ぬるいあたたかさは、

夜の闇と混ざりあい、

僕を暗い闇へと誘う。

僕は精いっぱい前を見て、

後ろを見ないようにして、

明るい場所へと走り続ける。

誰もいない交差点。

赤信号に止まる僕。

交差点近くの

自動販売機が、

夜の街をあかるく照らす。

誰もいない交差点。

やがて信号が青になり、

僕は走り出す。

静まり返った街。

夜の空には半月がかがやく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?