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詩 あの海を走る

夜の海岸線を想像する

そこは砂浜に沿った道で

道のすぐ近くまで波が来ている

道には波の満ち引きの跡が残る

雨が降ると

道は波が満ちて消されてしまい

どこが道か分からない

その夜の道を

独りでバイクを走らせる

震えるような寒さの中で

どこが道かもわからずに

波がひいた道にしぶきをはじかせ

まっすぐにバイクを飛ばしている

波が来るとタイヤが海水に浸かり

バイクは速度を落とし

ハンドルが波にとられる

ブレーキはかけない

道の先には

バイクのヘッドライトの

光だけがまっすぐに伸びる

海の上を照らす船のように

僕は海をバイクで走らす

どこに向かっているのか

このときの僕は知っていた

今僕はこのときの海を

よく思い出す

でももう二度と

あの海を走ることはない

どこに向かっているか

今の僕にはわからない

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