ショートショート かたき討ち

*はじめに
このショートショートは、フィクションです。

私は武士の家に生まれた。

しかし、父上が戦で亡くなって、
まだ子供だった私では家名を継ぐことが
できず、お家はお殿様預かりとなった。

元服をした年に、
お殿様にご挨拶に伺った時、
父の無念を晴らせば、家名を継がせようとの
約束を頂いた。

私は母と共に仇敵を探し回り、
なんとか探し当てたときには、仇敵は年老
いていて仇討ちをすることに疑問を感じた。

母は父の仇敵を討つのですといわれたが、
私にはできなかった。
仇には逃げられてしまった。

私の家は完全に取り潰され、
母も無念のあまり、亡くなってしまった。

私は天涯孤独の身の上となり、
諸国を放浪しながら、剣の腕を磨く日々と
なった。

しかし、それさえも空しく、
日々なんのために生きているかさえ、
わからなくなっていた。

そのとき、私の前に元服したての若者と、
その母親らしき人が立ちはだかった。
聞けば父の仇という。

私には覚えのないことだが、よく聞けば、
かつての私の仇敵の子供らしい。

私は彼の父を殺してはいないと教えても、
母親が耳を貸してはいけないという。

大方、私を倒せば、お家を継ぐ事が出来る
のだろう。同じことが繰り返される。

私は殺されてやろうかとも考えたが、
それでは、この子が操り人形になるだけだ
と考えなおし、ふたりを振り切って、
逃げだした。

ふたりから、武士の恥と叫ばれたが、
それが何とも心地よく、

笑いながら私は走って逃げだした。

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