詩 冷たい雪と、ぬるい風、そしてサクラの花
3月も
もう終わりというときに、
雪が降る。
忘れていた寒さや、
雪の冷たさ。
花が咲きはじめて、
緩んだところに、
不意うちされる。
寒さにふるえ、
あわてて、
厚着すると、
今度はまた、ゆるむ。
そして激しい風が、
うなりをあげる。
激しいのに、
風はぬるく、
あたたかい。
厳しい中にも、
少しの愛情にも、
似たものを感じる。
それは僕のこころが、
春の気配を感じるから。
もうそこにいる。
冬の陰に隠れたり、
冬の陰から出てきたり。
いたずら好きの春は、
もうそこにいる。
*
ぬるい風にあわせるように、
サクラが、やっと、
咲きはじめる。
来週の、今頃は、
もう散り始めているだろう。
とても短いサクラの花。
まだ、咲きそろわない、
サクラの樹々をながめていると、
なぜか、ふわっと、こころが
なごむ。
そして、なぜか、こころが、
ゆれる。
なぜだろう。
こんな気持ちにさせる花は、
サクラだけかもしれない。
淡いピンクの花が、重なり合う光景は、
美しさと、儚さを、あわせ持つ。
明日が来る保証なんて、
サクラの花にも、
僕にも、
どこにもない。
今年も見ることが出来た、
サクラには、
そんな想いもあるのかもしれない。
いま咲いているサクラを、
しっかりと、
目に焼き付けて見ておこう。