ショートショート 城の中

私はナイト。
かつては、王様に仕える者だった。

この国を襲うたくさんのモンスターたち。
私は王様の盾として常に王様をお守りして
きた。

その私がある日、大失敗をしてしまった。
発端はこうだ。

いつも私と共にいる、もう一人のナイトが
いる。名前はマックスという。

彼はとてもいい奴で友人としては大好き
なのだが、仕事面では大雑把な奴で、
いつも私が彼を庇っていた。

けれども王様の警護中にマックスがいなく
なるという失態を犯した。
それだけならまだいいのだが、運悪く、
その時に限ってこの辺りで一番強い
モンスターが現れて私と戦うことになった。

いつもなら、マックスがガードに徹して、
その隙に私が攻撃するという作戦で
モンスターを退治してきたのだが、
マックスがいないので私は攻守の両方を
やらなければならず、
あやうく王様にケガを負わせてしまう
ところだった。

お城に戻っても気分は晴れず、
鬱々としていたところへ、
王様から呼び出しがあり私はナイトを
クビになった。

もちろん、マックスもクビだ。

私たちは王様のために何年もお使いして
きたのに1つの失敗でクビになるんて、
あまりにもひどすぎる。

けれども決まったことはしかたない。

私はもうお守りすることができない王様に
分かれを告げてお城を立ち去ることに
なった。

私はどこにも行く当てがない。
ずっとお城の暮らしだったから。

そういえばお城から出たこともあまりない。
おろおろと城下町を歩いていると、
とてもきれいな女性を見かける。

私は知らなかったけれど、
その女性がお妃様らしい。

ナイトなのにお妃様を知らないなんてと
お思いだろうけど、
いつも戦場にしかいない私はお城の鍛練場
にばかりいて宮殿にはあまり行ったことが
ない。

遠目に見るお妃様はとてもお綺麗で、
何の穢れもないように見える。

けれどマックスがいうには、
わたし達をクビにしたのはお妃様のせい
らしい。
なぜ会ったことのもないわたし達を
憎むのか理解できなかった

先日のモンスター退治で危ない目に
あったことを恨んでのことかもしれない。

私だって死ぬ思いをしてなんとか退治
したというのに、とてもガッカリした。
人は見た目ではないのだ。

けれども、そのお妃様の後を歩く、
もうひと方が、さらに美しく、
私の目を奪った。
私はそのときもう恋をしていた。

そんな私をマックスはニヤニヤしながら、
見ている。

「なんだ、お姫様が気に入ったのか。
では、相思相愛だな。」

どういうことだとマックスを問い詰めると、

「いや何。お前が知らないだけで、
割と有名な噂なんだよ。お姫様がお前に
惚れているってね。ほら、こっちを見てる。
お姫さまはお前をじっと見ているだろう。
お城から連れ出して欲しいのさ。」

見ると確かに、お姫様が私を見ている。
そして目が合うと、頬を赤らめ、
両手で顔を蔽う。

「な。お前に惚れてるだろう。
それをあのお妃が知って、俺たちをクビに
したのさ。理由なんてどうでもいいのさ。
身分違いの恋ってやつだな。」

マックスは淡々と語るけど、こいつだって、
お姫様が好きに違いない。

けれど、私の気持ちを知って、
知らん顔をしてるに違いない。
彼のこういうところが、私は好きだ。

「それで、どうするんだ?」

「そんなことは決まってるさ。」

「そうだと思ったよ。だから俺はお前が
好きだ。」

私たちはお城に戻ろうとしているお姫様
一行の前に立ちはだかり、お姫様を奪って
逃げた。

わたし達に敵うものはこの国にはいない。

それからというもの、わたし達三人で旅を
することになったのだが、困ったことに、
お姫様は何もできなくて、
全ての面倒をみなければならない。

こんなことなら、
召使も一人さらってくればよかった。

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