グロテスクで美しい夢野久作の幻想世界【匣月世理のおすすめ小説 001】
こんにちは! 匣月世理です。
自己紹介を読んでいただいた皆さま、ありがとうございました!
想像以上に多くの方々にフォローしていただいて恐悦至極です。
タイトル後半に【匣月世理のおすすめ小説 001】とあるとおり、ぜひとも一読いただきたい作品を紹介していきます。
003あたりで力尽きて、三日坊主にならないように頑張ります…!
No.001 『死後の恋』
著者は夢野久作(ゆめの・きゅうさく)。
大正~昭和初期の作家で、怪奇幻想小説の傑作を多く残しています。
日本三大奇書の一冊『ドグラ・マグラ』はご存知の方も多いのではないでしょうか?(三大奇書という言葉には厨二心をくすぐられますね)
愛と狂気。夢と幻影。エロとグロテスク。残酷ながらも甘美な世界。
『死後の恋』は、そんな夢野久作の魅力が凝縮された傑作短編です!
あらすじ
ロシア革命直後のウラジオストック。帝政ロシアの貴族の血を享けているという男、ワーシカ・コルニコフが語ったのは、血と煤にまみれた宝石にまつわる世にも不可思議な物語だった。
ペトログラードの革命で家族や財産を奪われ、自暴自棄の考えから白軍の兵隊に加わった男は、リヤトニコフという少年兵士と出会い、兄弟同様の仲になる。お互いに惹かれ合い、隙さえあれば政治や芸術の話に興じる二人だったが、そんな楽しみも束の間、所属する分隊に連絡斥候としての危険な任務が言い渡される。
出発前夜、男はリヤトニコフから重大な秘密を打ち明けられる。うら若い一兵卒のポケットに隠されていたのは、選り抜きのダイヤ、サファイヤ、ルビー、トパーズ、など、両親から形見に貰ったという見事な宝石たちであった。
斥候旅行の途中、一隊は赤軍の計略に嵌まって全滅してしまう。左の股を撃たれて気絶している間に、たった一人、難を逃れた男は、ある欲望に突き動かされて、戦友たちが追い込まれた森の闇の中へと這いずっていく。
感想・コメント
冒頭にも書いた通り、日本三大奇書の一冊『ドグラ・マグラ』を生み出した奇才・夢野久作の短編です。
私も大学生の頃に『ドグラ・マグラ』を手に取りましたが、当時はなんとか読破したというだけで、物語を味わい尽くすことができませんでした。いつかまた挑戦したいと思っています。
さて、この『死後の恋』は文庫本で約30ページに収まる短編小説。だからと言って侮るなかれ、短編だからこそ、夢野久作の生み出す「狂気」をぎゅっと凝縮して堪能することができる作品になっています。
血と煤にまみれた宝石をめぐる真実(あるいは、それはすべて男の妄想なのかもしれませんが)、男とリヤトニコフに訪れる残酷な結末、エロとグロテスクの真骨頂には、しかし、どこか美しさを感じずにはいられません。
短編ですので、『ドグラ・マグラ』は難解で挫折してしまった、という方にもオススメです。狂気と幻影が渦巻く夢野久作の世界に、あなたも足を踏み入れてみてはいかがでしょうか?
*最終更新日 2024/10/18