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クラウドファンディングによる新しい公共建築のつくられかた

 我々人間にとって本当に必要な公共建築とは何かを考えていきたい。
一般に公共建築をつくる際、行政がプロポーザルを実施し、技術提案書と業務実績証明書を提出した後に少数に絞られた設計者の中から、ヒアリング(プレゼン)を通して最終的に1設計者(連盟、JVを含む)が選定される。その後ワークショップを通して近隣住人から設計に対する意見を募り、それを行政と設計者が取り纏めた後、入札を通して施工者を公平に選定する。プロポーザルの実施から、設計・施工に至るまでに掛かる全ての費用は税金から賄われる。

 この手法は、地域のより不特定多数の人が利用する大規模な公共建築をつくる際には正しく民主的であるが、必ずしもこれが「公共性」のすべてとは言い難い。

 公共性には①コミュニティと②アソシエーションの二種類がある。
①コミュニティ=生きる上で必要な公共性
ここでは個人としての人間のみならず、町や都市の中で経済という仕組みを利用して人間が組織的に生きていくために必要な建築という意味で捉える。つまりこれは役所・学校・図書館・各種文化施設が当てはまる。
②アソシエーション=生きる上で必ずしも必要ではない趣味的な公共性
これは不特定多数の人間の参加を前提としない、共感した人間だけが参加する建築と捉えられる。つまり商業施設・宿泊施設・飲食店・ライブハウスなどこれまで民間がつくりあげてきた建築である。
私は後者のアソシエーション的公共建築のつくられかたに可能性を感じる。

では、アソシエーション的公共建築とは具体的にどのようなものかを、建築がつくられる上で発生する経済の仕組みという視点で想像してみる。

 今回は、建築に限らず多くのものづくりや実験的事業ですでに導入されている「クラウドファンディング」という手法に着目してみる。
クラウドファンディングとは、発案者が新規プロジェクトをインターネット上で公開し、共感をもった者がリワード(あるいはリターン)と呼ばれる報酬と引き換えに出資された小額の資金を集める事で費用を賄うという仕組みである。
リワードとは、プロダクト制作のプロジェクトの場合は先行してその製品を出資者に届けることであったり、宿泊施設であれば無料宿泊券などがそれに当たる。
つまり制作費用を確保するだけでなく、ユーザーさえも事前に獲得する可能性を持つしくみである。
建築家が実施した例でも、被災地にコワーキングスペース、居住スペース(1日、1か月等の柔軟な貸出に対応)、オフィス&工房の複合施設をつくるプロジェクトが既に成功している。以下は藤村龍至氏によるプロジェクト。

出展:Makuake

このようなプロジェクトは、プラットフォームと呼ばれるクラウドファンディングプロジェクトを取り纏めるHPで見つける事が出来る。
代表的なプラットフォームでは「CAMPFIRE」「Makuake」「MOTION GALLERY」などだ。

 クラウドファンディングを利用してつくられる建築は、前例を見る限りコミュニティ的公共建築といえるプロジェクトはほとんどなく、小規模かつ利用者が限定的であるものが多い。しかしながらこの仕組みを利用する事で、ユーザーが本当に求めている公共的な場をつくることができ、設計者にとっては請負型ではなく提案型でプロジェクトを実行できるしくみにもなり得るという意味で可能性を感じている。

 ここで、クラウドファンディングの仕組みを利用して建築をつくるうえで想定される問題とは何かを考える。

①投資される企画者としての信頼度をどう勝ち取るか
②建設費から設計料までの全てをクラウドファンディングで賄う事が可能なのか
③資金が集まらなかった場合それまでに掛けた時間と自己資金が全て無駄になるのではないか
④新築の場合土地と建物を誰が所有するか

以上の事はかなり根本的な問題であり簡単に解決できるものではないが、逆にこれらを解決できれば豊かな公共性を生むきっかけをつくることができる。さらに大げさに言えば、アソシエーション的公共建築がつくられる仕組みを成熟させる事で、これまでのコミュニティ的公共建築が果たしてきた機能まで網羅できる可能性もあるのではないかと微かに感じる。

 次回はこれらの問題の解決策を考えつつ、クラウドファンディングの具体的な利用方法について掘り下げていきたい。


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