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エッグスン・コケッコーズ

いつもよりちょっといい卵があったので、卵かけごはんが食べたくなった。パックからひとつ手に取る。小ぶりでざらっとした濃い茶色の殻を割り、たしか栄養価は変わらないんだよな、と身も蓋もないことを思いつつ出汁醤油を回しかける。卵が短時間でふんわり泡立つのは、ごはんの熱で程よく加熱されるからだろうか。

何年か前までは、朝の明けきらない時間に一番鶏の鳴き声が聞こえていた。コケコッコーというオノマトペで表されるあの音声は、夜明けを告げるにふさわしく朗らかで、ほどほどの距離で聞くぶんにはなかなかよいものだったのだが、どうもその役割はカラスに代わられてしまったようだ。

朝一番に聞くのが鶏の声かカラスの声か、というのはけっこう大きく一日に響きそうな気もするが。

養鶏農家に卵を買いに行くと、殻がうまく形成されなかったぷにぷにの軟卵をおまけにつけてくれたりする。半透明の卵殻膜の向こうに生命が透けている。

やわらかい弾力につつまれた卵は、人間の子宮にひっそりと収まっていても違和感がなさそうで、けれど生まれてくるのはヒヨコでもヒトでもなく地球外生命体のような気もして、グロテスクだけど神秘的で、ところでなぜ人間は卵で産まれないのだろうと思い巡らせたりしてしまう。

あわくあまく泡立った卵かけごはんをゆっくり味わって食べて、またこんな「どうでもいいような話」を誰に向けてでもなく書いてしまったが、ついでに付け加えておくと、なにげに好きなのは、サッポロ一番塩らーめんに入れて3分茹でた、とろり半熟の黄身。

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