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可愛い聞きなし

スクランブル交差点で信号が切り替わるとき、少しの間だけ人も車も居なくなることがある。時間が止まったようなその10秒に、アスファルトにいくつもの小さな影が飛び交っているのを見た。夏の日差しを背に、虫を追いかけ飛び回るツバメたちの影だった。

「あきない世傳 金と銀」を読んでいると、鳥の声を日本語に置き換えて聞く「聞きなし」の表現がよく出てくる。

例えばツバメ。「土食って、虫食って、口渋ーい(つちくってむしくってくちしぶーい)」
これを早口でいうと似ているらしい。
有名どころではウグイス。「法、法華経」
ホオジロは「一筆啓上仕り候 (いっぴつけいじょうつかまつりそうろう) 」
メジロは「長兵衛、忠兵衛、長忠兵衛」

鳥の鳴き声をカタカナで表現するのは難しい。人それぞれ聞こえ方が違うから。
庭にいると聞こえてくる、どうしてもカタカナにできない鳥の声があり、先日ようやくそれがミソサザイだとわかった。
「ピピスクスケスチルチルピョロピョロピリピリリリ・・ルリリル」
誰かが何とかカタカナで表現した鳴き声に、もしやと思い調べてみたらバッチリ当てはまった。
ミソサザイ、お前だったのか。
ミソサザイの鳴き声は「聞きなし」では表せないけど、メジロやホオジロの鳴き声はウグイスの様にしっかり覚えることができた。

夜になると遠くからホトトギスの鳴き声が聞こえる。「聞きなし」は「天辺翔けたか (テッペンカケタカ) 」。もう一つは「特許許可局 (トッキョキョカキョク) 」。
「ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただありあけの 月ぞ残れる」
百人一首にも詠まれているこの歌が、しみじみと実感できる。
夫にはいつも「テッペンハゲタカ」と聞こえるらしい。




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