バイトの話(3)(ちょい長い

 居酒屋のバイトをやめたとき、俺はいろんな人に接する仕事は向いてない!俺は自分の周り数mの人に愛を与えるような仕事が向いてるんだ!と思った。
 確かこのころ村上春樹のノルウェイの森を読んで、主人公かその先輩がそんなセリフを言っていた。それを思ったわけ。
 で、どうしようか、ということで周りの人の話を聞くと、コンビニ、高校生のテストの採点のバイト、水族館?の受付?みたいなバイト、飲食店などなど・・・

 ほーん・・・・
  う、うーん・・・?

 俺はそもそも働きたくないっぽいなぁというのを感じ始めていた。そこで、家庭教師をやっているという友達のつてを頼り、そこの家庭教師センターで働こうと思った。家庭教師で教えることに俺の知らないことは絶対にない!なぜなら俺はそこそこイケてる大学生だからだ!!!と思ったからだ。

 そこで、面接に行くと、まぁ、またしても即OKなんだけど、家庭教師じゃなくて、家庭教師の契約を取ってくる方の仕事はどうか、と言われ、ほーん?よくわからんが?その偉い人がそういうなら俺も出来るんじゃね?と思い、その家庭教師の契約を取ってくるバイトを始めることになった。


 で、この契約を取ってくるバイトは結局ぜーんぜんうまくいかなかったわけ。
 ぜーんぜん上手くいかないってのは僕は全然契約が取れないわけ。
 別に飛び込みじゃないわけ。
 あるご家庭が、家庭教師つけようかな、と思って、うちの家庭教師センターにTELして、ほな、いついつ体験授業しますんでそこでお金の話とかしますわ。っていう段階で僕が体験授業しつつ、最後に契約しましょうねぇ、っていう仕組みなわけ。
 それでぜーんぜんダメなわけ!w
 最初何回かは上手くいったんだけどねぇ・・・


 だって、そんな体験授業に来ました~、ほな、最後にお金の話して、いきなり今決めてくださいとか言えないじゃん!!
 18歳の若造が自分の親くらいの年の人に向かってさ。
 言えない言えない!!

 だって、ほかの家庭教師センターも見たいです、って言われたら、そりゃそうよね、って思うし、お父さんと相談しないと決められない、って言われたら、そりゃそうよねって思っちゃう。でも俺以外の人は言えるし取ってくるのよねぇ、契約。
その場で。

 何ならほかの家庭教師センターの人もその場で多分、契約取ってるのよ。なんだこりゃ、って思いながらもそのうち出来るようになるかぁ???と思い続けていたのだ・・
 で、ぜーん全出来ないから、それに並行して普通の家庭教師の仕事も貰ってしている感じだったのじゃ・・・・。

 契約のバイトは結構僻地に行くことが多い(電車一時間、徒歩30分とか)。なぜなら、駅近に住んでいる人は塾があるから。塾に送り迎えするのが大変だから家庭教師に来てもらおうというニーズがあるというわけらしい。だから営業成績がイマイチだからやめたいなぁとはちょこちょこ思っていた。

 でもそんななか一回だけいいことはあった。
 僕は契約のバイトだったけど、時たま、先生が決まらないとか、短期間だけ、とかで家庭教師をすることもあって、そんなときだった。
 とある難しい子供(双子で片方はいい学校に入れたけど、片方は落ちちゃったという落ちちゃった方の子)を家庭教師することになった。
 契約に行った先輩からは結構わがままな?生意気な?イヤな?子供だと聞いていて、うーん、ちょっとやだなぁ、まぁでも仕事だし行くか、って感じだったわけ。

 で、実際、行ってみると確かにちょっとムカつくわけ。なんか舐めてん なぁ的な???でもまだ子供なわけ!
 それに双子の兄弟で片方だけ受験落ちちゃうとか可哀そうなのは俺もわかるわけ!!だから、俺はあーだねこーだね聞いてあげて、ほら、やってごらん、みたいなことをしてたらその子も話を聞いてくれるからか、めーちゃくちゃ好かれたわけ!!
どこどこのラーメン屋さんがおいしいとか今、何が流行ってるとか。そういうことをたくさんしゃべってくれるわけなのよ!
 
 僕は結構子供嫌いだったけど、この子の面倒を見たあたりから、悪くないもんだな、と思うようになった。ほんで、その子は短期間だったか先生が決まったかで僕は行かなくなった。その子にもそのご両親にも感謝されて結構いい仕事をしたと思ったし、自分の成長にもなって、とても良かったと思ったのであった。
 
 と、ここで終わる話ではないのであーる。
 
それから数か月後か何かのとき、どこか別の家に契約のバイトに行ったとき、「どうしてうちの家庭教師センターにしようと思われたんですか」というお決まりの質問文をしたら、その答えが、さっきのちょっとムカつく傷ついたかわいい子の親御さんからココが良いと聞いたから、と言ってくれたんだわ!!

 そりゃうれしかった。あー、そんな風に言ってもらえていい仕事になったなぁ、って。何なら、そこで教えてたの俺なんすよ~って。ほんで、その家もじゃぁうちでやりましょうねぇ、ということですぐに決まり、みんなハッピー。その時、今でもそのちょっとムカついた、かわいい子は楽しくやってるようで本当によかったなぁと思った。

 そんな心温まるお話でした。めでたしめでたし。
 
 

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