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詩「わたしは白猫」

わたしは涙に色があると知っている
わたしの涙は墨のように真っ黒だ
ときに粘度を帯びていて
頬を裂きつつ流れ落ちる

けれど誰かの涙の色は判らない
涙は確かに見えているのに色は判らない
涙としてしか見えない

それでも
わたしのものより絶対的に
奇麗な色だろうことは
承知している

或いは
純粋、葛藤、孤独、挫折
逃げる、生きる、守る、忘れる
歩む、転ぶ、立ち上がり支えられ
抗う、見ない、選ばない、モラトリアム
わたしよりよほど人間らしい

そんな他人が暮らす街の灯を
羨ましいと思うことすら
わたしにはできやしない
もう届かない
触れられない

暗闇の中に感じる気配
わたしは足元にちょこんと座る猫だった
お帰りよ、独りにしてよ
それでも足元にちょこん

暗闇の中にぼんやりとした輪郭
どうしてかほっとする
今ははっきりと感じる
わたしは足元にちょこん
その孤独を見つめてる

あなたの涙は何色ですか
いつかわたしが知ることができますか
貴女の傷をお手当てできない
貴方の傷をお手当てできない

わたしは黒猫に憧れる白猫で
薄汚れた毛並みは灰色
でもロシアンブルーにはなれない
ううん、わたしは白猫
灰色猫にはならなくて良い
もしロシアルブルーに間違われたら?
薄汚れた毛並みは
わたしの生きてきた証なのに

にゃあと鳴いてみる
泣き方が分からない

あなたの足元にちょこん
薄汚れた毛並みに優しい手
あなたの足元にちょこん
薄汚れた毛並みを労る手

縋るようにわたしを助ける
あなたの手
縋るように赦しを乞う
あなたの手

夕焼け小焼け、烏は帰る
夜のお散歩を計画するの?
何が正解、どれが間違い
答え合わせはいつできる?

ありがとうの数
ごめんなさいの数
自己弁護して正当化
他責と自責の妥協案

貴女の背中、お手当てできない
貴方の背中、お手当てできない
それでもどうか
ありがとう

にゃあにゃあ鳴くの
泣き方を試行錯誤
にゃあにゃあ鳴いて
泣き方の練習を

偽物の白猫かしら?
いいえ、わたしは白猫よ
間違いなく白猫よ
真っ白じゃないだけよ
薄汚れて見えるけど
わたしにとっては大切な
生きた証なのよ

貴女の涙を拭えもしない
貴方の涙を拭えもしない
貴女の傷をお手当てできない
貴方の傷をお手当てできない

背中にお手当てできもせず
したいといつも思ってる
あなたに、あなたに

わたしはあなたの
足元にちょこん
にゃあと鳴いたり
泣いてみたり


後日談。

この詩は、大切な友人を想って書いた。
だけれども、それを友人に話したら、そうだったの?と言われた。
そうだよ!こんなにもあなたとのことがたくさんあるじゃない!って言ってみたけど
誰か別の人のことかと……。
彼女がそういうふうに思うだろうことをわたしはどこかで気づいてた。
だから敢えて伝えてしまった。
気づかれたいという子供じみた思いでもある。
けど、この詩を彼女がもしかしたら嫌だと感じたりするのかな……なんてやっぱりわたしも自信がなくて、書いてすぐには伝えられなかった。

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友人への手紙

あいらーびゅー!!!
わたしの友達に、心からの感謝を。
出会ってくれてありがとう。

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