見出し画像

北海道の宿泊税導入について北海道議会の藤井辰吉議員に伺ってきました

こんにちは
函館減税会です。
函館減税会は、函館市(基礎自治体)や北海道(広域自治体)における
全ての増税に反対し、減税を実現するための活動を行っています。

今回は、北海道で導入が進められている宿泊税について、道議会議員の藤井辰吉さんに、税の疑問点や問題点、導入についての動向について伺ってきた内容について報告します。
まず初めに、宿泊税とその問題点について書きます。次に、藤井議員に伺った際のレポートを書きます。藤井議員に伺った内容の記述については、対話形式ではなく、個別の項目についてどのような話を伺ったかについて、公開できる範囲(後で公開情報から確認できるもしくは確からしい内容)で書いて行きます。


宿泊税とは

宿泊税とは、宿泊施設の利用に対して課せられる税金です。
(宿泊施設側が納税するので税は事業者に課せられています)
既に以下の自治体で導入されています。

  • 広域自治体

    • 東京都

    • 大阪府

    • 福岡県

  • 基礎自治体

    • 京都市 (京都府)

    • 金沢市 (石川県)

    • 倶知安町 (北海道)

    • 福岡市 (福岡県)

    • 北九州市 (福岡県)

    • 長崎市 (長崎県)

宿泊税は法定外目的税という法律の枠組みで作られています。
地方自治体(地方団体)の税については、地方税法に定められていますが
地方税法に定められていない税についても、条例に基づいて税を
新設することができます。
(総務省地方税制度法定外目的税のWebページを参照)

宿泊税の導入の流れとしては、おおむね以下の様になっています。

  1. 導入検討を表明

  2. 関係者・有識者の検討会を実施

  3. 行政の取りまとめ案・報告書の提出

  4. パブリックコメント

  5. 議会に条例案提出

  6. 議会で条例議決

  7. 総務省(総務大臣)で承認

北海道では、現在4のパブリックコメントを募集している段階です。

宿泊税の問題点とは

さて、本題です。
全ての増税に反対するというスタンスで、宿泊税の問題点について
説明します。

宿泊税は本来宿泊施設の売り上げだったもの

宿泊税があってもなくても、宿泊をするかしないかはほぼ変わりません。
例えば、国内で旅行を計画したときに、大体2万円で宿泊したとしましょう。旅行の目的は、特定のイベントに参加したり、名所を見に行ったりなどです。そんな中で、宿泊税として100円200円が取られたところで旅行先を変えようとは思わないでしょう。

(当然ながら、宿泊税の額を無限大に増大させることはできません。上記の話は宿泊税の額がごく少額である場合に限ります。)

しかしながら、宿泊者が100円200円を追加で払っても宿泊するのであれば宿泊施設側は価格を上げられるはずです。そうは言っても、価格を上げれば消費者の消費行動が変わるだろうと予想するのも当然なので、価格を上げることに対しては慎重です。民間が価格を上げる大変さを抱える一方で、行政が一律に課税をすると、実質的には本来事業者が得られるはずだった売り上げが行政に徴収されることになります。

予算の使い道と税の整合性

ところで、宿泊税を何に使うのでしょうか。
宿泊税の使途について、北海道の資料では主に次の項目が挙げられています。

  • 観光の高付加価値化

    • マーケティングの強化

    • 資源を活かした観光の推進

    • 地域の取り組み支援

  • 観光サービスの充実・強化

    • 人材の確保・育成

    • 受け入れ機能の強化

    • 移動利便性の向上

  • 危機対応能力の強化

いろいろあって難しいですが、要点としては以下の項目を覚えておけば大丈夫です。

  • オーバーツーリズム対策

  • 観光地域づくり法人(DMO)

  • 新規の観光事業の推進

オーバーツーリズムとは、観光地の訪問客が著しく増加することで、地域キャパシティを超え、日常生活や環境等に悪影響をもたらすことなどを言います。(株式会社JTB研究所観光データベース観光用語集を参考にした)
オーバーツーリズム対策は宿泊税の使途としてよく説明される項目です。

上記の3項目は本当に行政が行うべきことなのでしょうか?
オーバーツーリズムについては、交通インフラの圧迫、観光ごみの散乱などがありますが、前者はUberなどのライドシェアの規制緩和、後者については、行政ではなく民間で管理することによる最適化で対応することを考えるべきでしょう。
新規の観光事業の推進については特に顕著です。民間が動きやすいようにすることと、行政が補助金を付けることは同じではありません。
観光地域づくり法人(DMO)は聞いたことがない人も多いのではないでしょうか。これは、観光に関する法人が観光庁にDMOとして登録して、行政から補助金をもらったりする仕組みのことです。統計、データ分析、宣伝活動などが行われています。

行政が担う役割なのか疑問がある使途のために税が導入されるということを我々は問題視しています。

納税事業者の納税コストが高い

宿泊税の課税内容にはいくつかの形がありますが、主に以下のどれかです。

  • 一律定額

  • 段階的定額

  • 一律定率

いわゆる"ニセコ"で有名な倶知安町では定率の課税が実施されています。
よくあるのは段階的定額で、宿泊料金が20000円以下なら100円以下というような具合です。
ここで問題になるのは以下の事項です。

  • 宿泊料金と宿泊以外のサービス(食事)を分けなければならない

  • 価格帯別に税額を分けて計算して集計しなければならない

皆さんが旅館などを予約する際に表示される価格には、宿泊料金の他に食事などのサービスによる料金が含まれています。宿泊税は宿泊料金のみを対象に課税されているので、事業者は各宿泊者が購入した宿泊プランごとにこれらを分けて税金を計算しなければいけません。これは手間です。

負担するのは観光客だけではない

宿泊税は観光振興を目的としており、受益者負担の原則から課税されるというお決まりのロジックで説明されます。そのため
「よその人が払うんでしょ?」
「外国人観光客が払うんでしょ?」
と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、宿泊税の重要な点として以下の二つの事実があります。

  • 宿泊者がどこから来たのかは区別されない

  • 宿泊目的は区別されない

この二つを踏まえたうえで、次のグラフをご覧ください。

宿泊者向けアンケートの集計結果

この図は、北海道が宿泊者向けに実施したアンケートの集計結果です。上図左は宿泊者の居住地の項目別割合、上図右は宿泊者の宿泊目的の項目別割合を表しています。
まず第一に、北海道内の宿泊施設に宿泊する人の66%は道内に居住しています。さらに、よくインバウンドで話題になる海外客については3.2%に留まります。
第二に、宿泊者の宿泊目的の6割は観光ですが、裏を返せば3割から4割は
観光以外の目的で宿泊しています。ちなみに、その他には介護などの事情での宿泊目的が含まれています。

つまり、問題点を整理すると次の2点にまとまります。

  • 北海道の宿泊税を負担するのは北海道居住者

  • 観光振興目的にもかかわらず仕事や介護を目的とした人も課税される

    • およそ30%~40%です

ですから、観光客が負担するというのは間違いですし
ましてや外国人観光客が観光予算を負担してくれるというのは的外れです

税金と歳出は際限なく拡大する

議事録を読めばわかりますが、現状の課税額で予想されている税収では満足していません。詳しい事情は議事録を見ていただければと思いますが、もともと30億円の税収を見込んでいたのが、倍額の60億円になり、最終的に45億円に落ち着きました。しかし、観光予算の利益代表は、なぜ予想税収が減っているのかというように、予算減額に文句を言っています。

基本的に、税金と歳出は際限なく拡大します。日本では20年くらい前から財政再建が言われており、財政再建を目的として様々な税その他の負担金が増額・増設されてきましたが、それでも政府歳出は増え続けています。政府というのは基本的に浪費家ですから、収入が増えても使う量が増えるだけなのです。
観光関係に限って言えば、温泉施設を利用した際に入湯税が課されますが、もともと温泉の管理費が目的であったはずなのに、観光振興という幅広い用途に使途が拡大しています。観光振興予算も何に使われているのかというと、特定の観光イベントの宣伝など、そもそも民間でお金を集めてやるべき事業では?というものがたくさんあります。

また、宿泊税導入の理屈に、観光振興予算の受益者負担や目的税化など、あたかも観光振興予算をよその人が負担してくれる理屈があることは説明しましたが、仮に宿泊税を払う人が全員外国居住者でも、観光振興予算に対する皆さんの税負担は減りません

第4回懇談会議事録で次のようなやり取りがあったようです。一部強調のために太字にしています。

(槇観光振興監)
2点目。一般財源と新税で対応する施策 について 。1回目の論点整理の議論でもあったとおり、今後も新税はあくまでも観光目的として使うということで、この新税の財源だけが観光財源ということではない
(石井座長)
最初の議論で、既存の予算とは重複しないとしていた。基本的に、新税はプラスアルファとして充当するということを当初から議論していたと思う。そこは変わらないということだけを言っていただければ 。
(唐神委員)
それもお約束いただけるということで良いか。一般財源の観光予算を減らすということはしないという約束をいただけるということか
(槇観光振興監)
予算額については 、今この場で明確にお約束することはできないが、一般財源プラス新税で観光振興を行っていくという姿勢には変わらない。

第4回 観光振興を目的とした新税に関する懇談会 議事録

というわけで、予防線を張ってはいますが
元の一般財源予算を削らないという確約がなされていますね。
既存予算は据え置き、すなわち税負担はそのままに、単純に税と観光予算が増えるだけです。さらに、この額面でも不満があるようなので
今後も増額していくでしょう。

税の拡大は額面だけではありません。既に挙げた入湯税に対して宿泊税が新たに追加されたように、入域税という新税の導入の可能性もあります。入域税とはその名の通り、北海道に入ってきたら課税というもので、空港使用やフェリー、新幹線などに課税されるものです。北海道では、観光振興を目的とした新税の検討【論点整理】という資料に記載がちゃんとあります。既に宿泊税を導入している京都市でも入場税の話が立ち上がっています。決して空想に留まる話ではありません。

このように、税というものは一度導入すると拡大し続けるのです。そのため、減税会では全ての増税に反対しています。

議員さんに話を伺った件

内容については筆者が要約しています。

Q1. 藤井議員は宿泊税導入に賛成してますか?反対してますか?

都道府県が宿泊税を導入するということについては、まだ疑問視しているところが多い。特に、使途の必要性には強い疑問がある。わざわざ新税を導入するほどの大義があるのか考える必要がある。

Q2. オーバーツーリズム対策と宿泊税の使途の対応に相反する部分もあると思いますが、議員の意見は?

観光振興で呼び込みつつ、観光地のキャパシティを増やしていくということで、必ずしも相反する施策であるとは言い切れない。ただ、オーバーツーリズム対策については、一般財源の中で、特別な施策というより、窓口業務など通常業務の強化などをしていけば良いのではないかと思う。

今後のスケジュールとお願い

前述したとおり、北海道の宿泊税導入はパブリックコメントを募集している段階です。パブリックコメントの募集が終了すると、それを踏まえて資料が整理され、道議会に条例案が提出されます。道議会で議決されると、基本的に宿泊税導入は確定します。

ここでお願いです。残り期間は非常に短いですがパブリックコメントの投稿をお願いしております。パブリックコメントとは、行政の施策に対して民間の意見を募り、修正を図る仕組みのことです。以下にパブリックコメントのリンクを張っておきます。締め切りは5月23日(木)です。

注意点ですが、パブコメは「観光振興を目的とした新税の考え方(懇談会議論のまとめ)」という資料に対するものです。上のページにもリンクがあるので、できれば資料をよく読んで投稿したほうが、有効な意見になると思います。

現時点で、積極的に推進している議員はいないようです。ただ、明確に反対を表明している議員も見当たらないのが現状です。皆さんの選挙区の北海道議会議員に賛成反対を聞いてみてください。少なくとも鈴木直道知事が行政側として推進しているという現状はあるので、議会で反対するしかありません。議員に反対の意思を伝えていくことで、議会での否決を実現しましょう。まだ勝機はありそうです。

皆さんの声ですべての増税に反対しましょう!

参考資料

他にも、観光についての税に関する記事を張っておきます。

宿泊税導入に反対している他の減税会の記事も参考にご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?