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保育園がいやだった長男の話〜桜の思い出その1〜

日曜日に久しぶりにドライブをした。
笑ってばかりの楽しい時間だった。
桜は終わったと思っていたが、山の中の街道沿いは色の濃い八重桜が満開で美しい桜のトンネルをぬけることができた。
この季節に思い出す出来事がある。
それは長男が保育園に通っていた頃のことだ。

長男は食も細く、好き嫌いも多かったので、保育園の給食が苦手だった。
中でも給食のデザートのフルーツが一番苦手で、フルーツが出る日は朝から元気がなく、トボトボと苦行に向かうような足取りで保育園に行った。


お友達との遊びでも、臆病な性格だったこともあり、やんちゃな子に泣かされることも少なくなかった。

その頃わたしは、長男にとって保育園はそれほど楽しいものではないのかもしれないと思っていたし、保育園に通わせるのは可哀想だなとも思っていた。


そんなある日、長男が保育園から帰ってくると
「はい。お母さんにプレゼント。」
と言って園児服のポケットからハンカチを出した。

何かと思ってハンカチを開けると、中から一片の桜の花が出てきた。

「今日みんなで散歩しとったら、桜のお花がいっぱい咲いててな、きれいやったでお母さんにも見せてあげようと思ってとっといたの。」
と嬉しそうに満面の笑みを浮かべながら言ってくれた。

臆病な性格でお友達とも馴染めず、嫌いなものを出される方が多い給食を食べさせられて可哀想、と思っていたのはわたしの思い込みだった。


長男は長男なりに、保育園で好きな遊びを見つけ、苦手な中にも食べられる食材を増やしていき、先生やお友達との散歩では、きれいな桜を楽しんでいた。

そして自分が見てきれいと思った桜を拾い、そっとハンカチに包んで、母に持って帰ってきてくれるやさしい子に育ってくれていた。

保育園に行くのが嫌で、とぼとぼと半べそをかきながら歩いていた長男を見て、どうしてあげればいいのかわからず、一緒に半べそになっていたわたしに、この子は大丈夫だから、何も心配しなくていいよと桜の花が教えてくれた。
わたしはうれしくて泣いた。

もう20年も前のことなのに、桜の季節になると、あの時のことがよみがえり、しばし幸せな気持ちにひたる。


そしてこの桜の思い出には続きがあるので、次に書こうと思う。

冷え込んだ花冷えの朝、満開の桜の花に雪が積もりました。

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