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酢酸発酵 -発酵の基本知識-⑳

酢酸発酵とは

酢酸菌が好気的条件下により、アルコールとブドウ糖をエサに酢酸菌を生成する発酵のことを指します。

酸化発酵の一種で、アルコールから酢酸を生成する発酵に限定して酢酸発酵と定義します。

アルコール以外のものから酢酸を生成する発酵も存在し、それらは嫌気的条件下での発酵となりますが、それらの発酵は酢酸発酵とは呼びません。

アルコール発酵を経て酢酸菌が生成する酢は食酢とよばれ、日本だけでなく世界中で様々な酒、アルコール発酵を元に醸造されています。


世界で作られる酢

酢酸発酵から作られる酢は、世界各地に存在し、日本では、酒粕から米酢を作る作り方が伝統的な醸造方法ですが、フランスではワインを用いたものをワインビネガー、イギリスではビールを用いたものをモルトビネガーなど呼び、親しまれています。.

そのほかにも、リンゴを発酵させてアルコールにし、酢酸発酵させたリンゴ酢は、主にアメリカのバーモント州での製造が盛んです。

また近年では自家製の酢として柿酢などが見直され、作られる事も多くなっています。

伝統的な作り方以外での生産方法は、アルコール発酵後に酢酸菌を添加します。
その後、程熟成させ、濾過、殺菌作業を経て酢として完成、出荷となります。


酢酸発酵により作られる主な酢の種類

  • 米酢

  • 穀物酢

  • 黒酢

  • ワインビネガー

  • モルトビネガー

  • リンゴ酢

  • バルサミコ酢


酢の語源

英語名称でのビネガーは、主に酸味を帯びたワインの意味を指しています。
フランス語ではVinaigre(ビネーグル)と呼び、vin(バン:ブドウ酒)とaigre(エーグル:酢っぱい)から発生した言葉で、もともとは酒が酸敗したものが食酢と考えられていたことからこのように呼ばれています。


伝統的な米酢の醸造工程

酢酸発酵が行われる酢の醸造工程は以下の通りです。(一例)

  1. 浸水
    米を30分から40分ほど吸水させます。

  2. 蒸米

  3. 製麹
    36度に冷却した蒸米に麹菌を均一に混ぜ、3日間温度管理を行い、米麹を製麹します。

  4. 半麹
    蒸した米と、米麹、水を壺に仕込みます。

  5. アルコール発酵

  6. 酢酸発酵

  7. 熟成

  8. 濾過、殺菌
    濾過後、70度で10分~15分殺菌します。

酢酸発酵後の熟成期間は蔵元により異なります。

今では壺で仕込む製法はあまり見られなくなり貴重な醸造方法ではありますが、一部ではまだこの伝統的な方法で醸造が行われている蔵もいくつか存在します。

また、酢酸発酵を促すために酢酸を添加する方法なども行わず、さらに無濾過の状態の酢も少数ながら流通しています。


酢酸発酵以外で作られる食酢

食酢にはさまざまな種類があり、原料や産地、国などで違いがありますが、日本では酢と呼ばれるもので酢酸発酵に該当しないものがあります。

それは「もろみ酢」です。

もろみ酢の原料は、焼酎や泡盛の粕を搾ったものから出来ており、「クエン酸発酵」であり、主成分も酢酸ではなく、クエン酸が主成分となりますので、分類上では酢酸発酵ではありません。

また、酢酸発酵ではないので、酢ではなく、清涼飲料水に該当します。

原料が同じく黒麹で作られている一部の黒酢もクエン酸発酵で醸造されるものがあり、いずれもクエン酸以外にアミノ酸なども豊富に含まれ、疲労回復効果などが高いのが特徴です。

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