正中線とは何か?どう使うのか⑤ ~ 無足、浮身、モーメント

前回まで、力を分散させてバランスをとる動きなどについて書いてきましたが、その中でモーメントについてはほとんど書いてきませんでした。
モーメントは回転の力。正中線はモーメントに対して最も有効に働きます。

・重心でないところを押すと、回ってしまう

箱を押して動かすとき、中心に向かって押すと、押した方向へ移動します。
しかし、中心からズレたところを押すと、移動しながら回転してしまいます。このように、中心を通らない力は、物体を回転させてしまいます。こうした力のあり方を、モーメントと言います。

中心を押すとまっすぐに動くが、中心からズレて押すと回ってしまう

これは、横回転だけではなく、縦回転も存在します。例えば、上段から剣を振り下ろす時には、剣が前に向かう反作用で、身体は後ろ向きの回転する力を受けます。

実際には、ほとんどすべての身体動作が、重心を通らない方向の力を生み出しています。縦に横に、回転する力を出し、あるいは受けながら運動しているのです。

・回転は、外からの力が必要

子供の頃、回転する椅子に乗って遊んだことはありますか?
椅子を回すとき、座ったままで回転させることはできませんよね。床を蹴って回転を始めさせる必要があります。回転運動は、必ず外からの力を受けなくてはならないのです。

剣を振る時には、剣を前に動かせば身体は後ろに押されます。
その分、足を踏ん張って反作用を止めます。
止める時はその逆で、また足を踏ん張ります。

この時、足は地面についたままで力を受ける必要があります。また身体も、地面からの力を伝えるために固めなくてはなりません。
力を受けている間は動きが制限されるので、これがいわゆる「居付き」になります。

・正中線と浮身・無足

そこで、地面から力を受けるのを極力減らそうというのが浮身、あるいは無足と言われる技術です。

剣を振る反作用を時間的に分散して、振り終わりまで保留する。
場所的に分散して、身体各部で処理する。
そうして反作用を身体各部で分散させ、釣り合わせれば、地面への踏ん張りを最小限に留められるので、居付きが少なくてすむことになりますね。

この操作にも、ここまで書いてきた正中線の機能が必要。

浮身・無足と言われる方法も、単に足だけの問題ではなく、正中線を使った全身の制御が欠かせないと言えます。

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