太陽から見えない場所
日差しが強い。
額に汗が浮いているのを感じる。
ちょうど日陰になっているベンチを見つけて、
ひと休みしていくことにした。
「どうした、大丈夫か。」
そんな声が空から聞こえてくる。
太陽が話しかけてきているのだ。
「ここの日陰にはベンチがあるんだ。そこで休んでいるだけだよ。」と、
太陽から隠れたまま返事をした。
太陽から見えているところは、全部太陽に照らされている。
照らされていない日陰のところは、太陽からは見えていない。
だから太陽は、日陰に入ったまま出てこない人が心配だという。
水筒の水を飲みながら、
「そんなに日陰が気になるなら、見に来ればいいのに。」と、
太陽に向かって問いかけてみる。
「そんなことをしたら、照らしてしまうぞ。せっかく涼しいのに。」と、
太陽は笑いながら答えた。
「それに、日陰を見るのは怖いものだからな。」
そんな不思議なことを、太陽は言う。
「どうして、日陰なんかが怖いんだ?」
こんなに涼しくていいところなのに。
「見えないはずのものだからだよ。お化けを見るようなもんだ。」
そう言われれば、そうなのかなあ。
それからしばらく休んで、もう一度歩き始めた。
日なたに出た時、太陽に向かって手を振った。
そうしながら、自分の影が手を振っているのを見た。
この影も、太陽からは見えていないのか。
そう思うと、なんだか不思議な気分だった。
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