夕焼け色の失恋

あの子とは、ロッカーが隣同士だった。
それがきっかけで、なんとなく仲良くなった。

恋愛、とまではいかないと思う。
別に、告白とかしたわけじゃないから。
ただ、一緒にいると楽しかった。

ある日、昼休みの時間に図書室に行ったら、
その帰りにあの子と出くわした。
いつも僕が図書室から本を借りて、
その本をロッカーに入れているのを知っていて、
「ロッカーに本が無かったから、ここだと思ったんだ」
ということで、待ち伏せしていたそうだ。

別に、頼んだわけじゃない。
なのに、僕の弁当までロッカーから勝手に持ってきて、
「そこで一緒に食べよう」とか言い出すのだ。
でも、一緒にいると楽しかった。

ある日、昼休みの時間に屋上に来た。
ロッカーには“屋上”と書いたメモを置いてきた。
すると、あの子も屋上に来た。
「一緒に食べよう」とか言うまでもない。
当たり前みたいに隣に座って、弁当を食べた。

「青色が好きなんだね」と、
あの子は僕のリストバンドを見て言った。
何かとあれこれ禁止される学生の、数少ないオシャレだ。
「ほら、見て、ちょうど同じ色」と、
あの子は自分の頭を指差して言った。
髪留めの色が、青だった。ちょうど、空みたいな色だった。

恋愛、ではないと思う。
でも、そのうちそうなる気がした。

結末から言うと、そうはならなかった。

あの子に彼氏ができたらしい。
誰から聞いたかは忘れた。
ショックでそれどころじゃなかったからだ。

でも、実際そうなんだと思う。
だって、最近、僕はずっと一人で弁当を食べている。
あの子と廊下ですれ違っても、目をそらして、挨拶もしてくれない。
心配して送ったメッセージにも、既読が付かない。

でも、あの子が笑っているのを見た。
僕じゃない男子と一緒のときだった。
きっと、あれが恋愛なんだと思う。

ある日、放課後に公園のベンチに座った。
ロッカーには“公園”と書いたメモを置いてきた。
少しだけ、期待してみた。
でも、やっぱりあの子は来なかった。
夕焼けになった空を見て、泣きそうになった。

恋愛、までではなかったと思う。
でも、いざ離れると寂しかった。

それからも、あの子は、僕じゃない男子と一緒だった。
ふと後ろ姿を見ると、髪留めの色が黄色だった。
たぶん、あの男子が好きな色は黄色なんだろう。
…ちょうど、夕焼け空みたいな色だった。

一晩寝れば、あきらめられるだろうか。
一晩すれば、あの髪留めの夕焼けも夜空になって、
朝にはまた青くなっていたり。…なんて、
そんな夢も見ないようになれるだろうか。

次の日。
教室の窓から見える空は、青かった。
でも、あの子の髪留めは、やっぱり夕焼け色だった。
泣きそうになった。

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