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行商と職商人

「私、生まれも育ちも東京葛飾柴又です。姓は車、名は寅次郎、
人呼んでフーテンの寅と発します。」
私の好きな映画「男はつらいよ」の寅さんの口上です。

※「男はつらいよ」より引用

数年前に日本の伝統的な履物、草履、下駄や足袋を販売するブランド「履物しば田」を立ち上げました。

令和のいま、昔ながらの草履や下駄を販売するのは大変そうに見えますよね。
周りの方からも、「家業じゃないのに?」「どうやって販売しているの?」
と言われたりします。
お店を構えてお客様を待つ商売だと最初は厳しいかもしれません。
そんななか、商品を持って催事場に売りに行く「行商」という販売スタイルを知りました。
というより、実家が呉服販売をしていたので、外商という販売スタイルにも馴染みはありました。
お得意様には、着物作家さんの新作や、入荷したばかりの希少な反物を、直接お客様のご自宅に伺い販売する。
その外商(お得意様廻り)から、行商(全国の催事場巡り)という販売スタイルに行き着くのは当然だったかも知れません。

ネット販売が中心の昨今、ポップアップや催事場での出店は新鮮で、出店者もお祭りのようなイベントになっています。
当店も、最初は行き当たりばったりで大変でしたが、工夫しながら徐々に販売方法に慣れていきました。

問題は、履物業界の取り巻く環境と職人の高齢化です。
他の伝統工芸の世界でも後継者不足による技術継承が非常に厳しいと聞いてます。
ただ驚いたことは、保護すべき履物技術が、今、目の前から消えていくのに、古くからある草履や下駄は、国の指定する伝統的工芸品の中に入っていません。
そこで、伝統的工芸品を指定する経産省のホームページを調べて見ました。
伝統的工芸品 (METI/経済産業省)


伝統的工芸品のマーク

「伝統的工芸品」とは

  • 主として日常生活の用に供されるもの

  • その製造過程の主要部分が手工業的

  • 伝統的な技術又は技法により製造されるもの

  • 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるもの

  • 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているもの

上記5つの項目を全て満たし、伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和49年法律第57号、以下「伝産法」という)に基づく経済産業大臣の指定を受けた工芸品のことをいいます。

この5つの項目を確認すればするほど、履物技術が指定されない理由がよくわかなくなります。
ただ、そこは私の出る幕ではないので、この小さな商い大きくするにはどうしたらいいかを考えてきました。
その中で出会った言葉が職商人(しょくあきんど)です。

職商人(しょくあきんど)とは、モノづくりをしながらの職人であると同時に、そのモノをお客に自ら売る商人のことを指します。
いいモノを作ればお客様がきっと評価してくれる。
それが励みとなって、もっといいモノを作ろうという前向きな力が湧いてくるのが職人気質です。
ただそれだけでは、モノがあふれている現代、まだ見ぬお客様に存在を知っては貰えません。
興味を持ってもらう為に、使ってくれそうな人が集まる場所を調べ、販売する行商が必要になります。
つまり、職人と商人の器量を備えないと職商人は成り立たないのが現状です。

伝統的な履物の面白いところは、お客様や売り手の私たちでカスタマイズすることが出来る点です。
伝統的な履物は、鼻緒の挿げ替えが出来るので、鼻緒とのコーディネートによって仕上がり雰囲気や着物の装いの印象まで、大きく変えてしまうほどです。
その鼻緒の挿げ替え技術を手習いし、多くの方に自分で挿げ替えできようなれば、伝統的な履物の奥深さや楽しさを知って貰えるかなと考えてます。

鼻緒「坪通し」


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