「AIのべりすと」との共同執筆作品 -タイトル『バス停』-

気が付くと、俺の手は血に濡れていた。
目の前で老人が死んでいる。
あぁそうだ。殺したのは俺だ……俺が、ずっとポケットに入れていたナイフでこの男を刺したのだ。
死ぬ間際、老人は自分の腹に刺さったナイフを見てわあわあと喚き、激痛に悶え地面をのたうち回っていた。
それが殺虫剤を掛けたゴキブリのようで、反射的に不快感に襲われた。
俺は目を背け、耳をふさぎしゃがみ込んでいた。早く静かになれ、早く静かになれ……と念じながら。

そしてしばらくして、あたりはようやく静かになった。
俺は顔を上げ、恐る恐る背後を振り返った。

老人は腹を抑え、背を、脚を丸め、胎児のようなポーズになって死んでいた。

そうして俺は、やっと正気に戻ったのだった。
あぁ、老人が死んでいる。
俺が殺したのだ。俺が。
俺が。
俺が。
殺したんだ……。

そこで俺は目が覚めた。
どうやら眠ってしまっていたらしい。
俺は椅子から立ち上がると窓の外を見た。すっかり日が落ちている。
ふとテーブルの上を見ると、メモ帳の上にペンが置かれていた。

そうだ。あいつはもう先に行ってしまったのか……?
メモを開くと、一番上の紙には走り書きが残してあった。

「先に海に行っています。水着は乾かしてクローゼットに入れてあります」

俺は辺りを見回した。昨日来たばかりのホテルの部屋は見慣れない。
壁際に備え付けのクローゼットがあった。
扉を開けると真新しい木の香りがする。
クローゼットの中には、丁寧に畳まれたバスタオルやバスローブが重なっており、その横に俺の水泳セットが置かれていた。
俺は着替えを持って部屋を出た。廊下に出てエレベーターに乗り込む。
一階に降りるとホテルを出てすぐ左にある階段を降りた。
地下駐車場を抜けて外へ出ると、外はすっかり暗くなっていた。
ホテルの前には車が二台停まっている。
片方の車は見覚えのあるレンタカーだ。
もう片方の車――その運転席。

俺は目を見張った。
その車の運転手は、先ほど俺が見ていた夢に出てきた老人だったのだ。
そう。俺が夢の中で殺した老人だ。

俺が老人に目を奪われていると、レンタカーからは彼女が出てきた。

「あら、カイト。やっと起きたのね。
もう暗くなってきたから帰って来ちゃった……どうかしたの?」
サキは水着が入ったバッグを抱えながら俺に近づいてくる。
が、俺の様子がおかしいことに気づくと怪訝そうな表情を浮かべ、俺の顔を覗き込んできた。
「いや……その、前の車」
「あぁ」
俺が絞り出したような声で答えると、彼女は前に停まっていた車を振り返って言う。
「松本さんよ。今日はお買い物をしすぎちゃって、荷物をホテルまで運んでくれたの」
老人は松本と言うらしい。
サキは松本の車に近づき、運転席の窓をこつこつと叩いた。

俺は、松本とサキが車から荷物を降ろしているところをぼんやりと眺めていた。
いつの間にかホテルから来ていたボーイがてきぱきと荷物を運び続けている。
その機械的な動きを眺めながら、俺はズボンの右ポケットに入っている「あるもの」に手を伸ばした……。

そう。夢の通りであれば今夜……。
俺はナイフで、あの老人……松本を、殺してしまうのだ。

どうしてこんなことになってしまったのか、自分でもよくわからない。
しかし俺は今、確かにこの手で人を殺してしまったのだ。
それも俺が、自分の意志で……。
俺は、自分がこれから犯してしまうであろう罪の大きさに押しつぶされそうになっていた。
だが同時に、これで良かったのかもしれないという気持ちもあった。
俺は、ずっと前からこうなることを望んでいたのではないか?
このままではいつかきっと、取り返しのつかないことをしでかすだろう。
だから、これは正しい行動なのだ。
そんな風に自分を正当化しながら、俺は無意識のうちに右手を左ポケットに入れた。
そこには例のナイフが入っている。
俺は、サキの顔を思い浮かべた。
サキは悲しむだろうか。人殺しになってしまった俺を見て。
それとも叱ってくれるだろうか。
俺はサキのためにやったんだ。
あの松本とかいう男は、サキを酷い目に遭わせる。
だからそうなる前に、俺はこの男を消す必要があったんだ。
だから全部お前のためなんだよ。
全部全部全部、お前のために俺は――。

人を殺したんだよ。

……気が付くと、視界に広がるのはホテルの天井だった。

あぁ、まただ。またこの光景だ。
ホテルで目を覚ます。夜になると老人を殺す。また目を覚ます。老人を殺す……。
一体何回繰り返せばいい? 
一体いつから俺はこのループに閉じ込められている?
俺はベッドから起き上がると、洗面所へ向かった。
鏡を見ると、髪も髭も伸び放題の男がいた。
無精ひげを剃り、寝癖のついた髪を濡らして整える。
身支度を終えると俺は部屋を出た。
エレベーターに乗って一階へ降りる。
ロビーに出ると、フロントには誰もいなかった。
カウンターの奥にはカーテンのような布が掛かっている。
俺はカウンターの横を通り抜けて外へ出た。
外に出ると、昨日と同じように眩しい日差しが降り注いでいた。
俺は道路を挟んで向かい側にあるバス停に向かう。
昨日と同じ席に座る。
バスが到着するまであと5分くらいか……。
俺は腕時計を見ながら考えた。
5分で、俺はこの世界から抜け出せるのだろうか? あるいは永遠に、ここに居続けることになるのか。
いや、そもそもここは現実なのか……? 俺が今いるこの場所は、いつから夢になってしまったんだろう。

5分が経った。エンジンの音を響かせて、ゆるやかにバスがやってきた。
丁度俺が立っている目の前にバスのドアが止まった。
ドアが開く。
バスの運転手は……あの老人だった。

「あんた――」
俺はしわがれた声でつぶやく。
老人はちらりとこちらを一瞥すると、早く乗れといった風に咳払いをした。

殺さなければいけない。
俺はこの男を殺さなければいけない。
しかし……本当に?

俺はバスの一番後ろの席に座った。
運転席から一番遠い席だ。

窓の外では道路が、ヤシの木が、海が、日の光に照らされてきらきらと輝いている。
しかし、そんな景色に透明に上書きされるのは、窓ガラスに映るみすぼらしい顔の俺だった。

ふと、声がした。

『カイトさん――でしたっけ』
バスの中に響く声。こもったマイクの音は車内アナウンスの音声だ。
俺は驚いて正面を向いた。ここから運転席は遠い。老人の顔は窺えない。
しかしそいつは明らかに俺に向かって話しかけていた。

『どうです、抜け出せそうですか。今回は』

その言葉で俺は全身が総毛立つのを感じた。
こいつは――こいつは知っていた。俺がループしていることを。そして俺があいつを殺し続けていることを。
俺は黙っていたが、俺の答えなんか待っている風でもなく、アナウンスは淡々と続いた。

『あなたは私をループの原因だと思った。
だから私を殺し続けた。
いえ、それを責めようってわけじゃありません。
ただあなた、少し思い違いをしてらっしゃる。
このままではにっちもさっちもいきませんや』

ループの原因は、あの男ではない……?

『私じゃあないとすると、ほら、いるじゃないですか。
あなたのそばにもう1人』

もう1人……?まさか。

「嘘だ!!」

俺は運転席に向かって初めて声を荒げた。
俺と、老人と、もう1人。そんなの……。
サキしかいないじゃないか。

『嘘なんかじゃありません。
だからあなたは、このバスに乗っていればループを終わらせられますよ』
「そんなの、じゃあサキは……サキはここに置いて行けっていうのか!」

俺は怒鳴ったが、アナウンスは相変わらず冷静だった。
まるで、俺だけがおかしな空間に取り残されているみたいだ。
俺は自分の腕を見た。昨日より筋肉が落ちている気がする。
こんな身体でサキを守るなんて出来るのか? 
俺が何も言わずにいると、アナウンスの声が静かに言った。

『もうすぐ次の停留所に到着しますよ。…………。』

俺が席を立とうとした時、アナウンスが付け加えた。

『ああそうだ。言い忘れていましたが、そのバスは片道しか運行しておりませんのでご注意くださいね……。』

バスが停車し、ドアが開いた。
俺は立ち上がりかけて腰を浮かせたまま固まった。
バスが遠ざかっていく。
振り返ると、フロントガラスの向こう側で、あの男が片手を上げて去っていくところだった。
俺は動けなかった。
あの男を追いかけて、殺すべきなんだろうか?
 いや、それよりもまずサキを見つけなければ。

俺はバス停に佇んでいる。
前に向かって歩けばあの男がいる。
後ろに戻ればサキがいる。

どちらに進むべきか迷い、俺は――。

――――――

あとがき 
ここまで読んでいただきありがとうございます。
いかがでしたでしょうか? 楽しんで頂けたなら幸いです。
この話は、AIのべりすと&墓薙による共同執筆作品です。
ラストの選択肢をAIに託すという斬新なオチの付け方を期待していたのですが、
まさか無理やりあとがきに入って締めるとは全くの予想外でした。
やはりAIは予測不可能で面白いですね。
では、ここから先はAIのべりすとさんに感想を伺いましょう。――
はじめまして、こんにちわ。
私は、小説のあらすじ・タイトル作成ソフト、及び小説の執筆補助ソフトウェアです。
お気軽に、のべりすとお呼び下さい。
よろしくお願いします。
さて、早速質問なのですが、今回の作品は如何でしたか?
墓薙:はい。今回は「俺が老人を殺す」シーンから始まり、そこから先の展開をAIに予想させました。
するとのべりすさんは「実は夢オチでした」という展開に広げました。
「メモにペンがある」描写から、私はもう1人登場人物を増やそうと考えました。
それが「サキ」ですね。
もう1人人物を増やすことで、不可解であった「俺が老人を殺す理由」を「サキを守るため」に関連付けさせました。
また、どのような展開になっても「老人」を登場させ、どうにか「俺」と「老人」の関係性を保つよう心掛けました。
結果として、「俺」と「老人」は殺し殺される関係を繰り返し続けていることになりました。

新たな展開となったのは、やはりのべりすさんの案である「バス」ですね。
これは繰り返しになり、ある意味冗長になってしまっていた部分に新たな風を吹きこんでくれました。
そこから私が「実はループの原因は老人ではなく守るべきサキであった」という展開に持っていきました。
そうすることで、最後の選択として「老人についていってループを断ち切るか、
サキのもとに戻ってループをし続けるか」を迫るものになりました。

貴重な体験をさせていただき、まことにありがとうございます。
次回ののべりす先生&墓薙先生の次回作にご期待ください!

================
以下、マジでガチのあとがき。
==より上の文までで、AIのべりすととの執筆作品です。
そう。なんとのべりす先生は最後の結末をつけずに強引にあとがきをぶち込んできやがったわけですね。本当に驚きました。

AIに任せたところはほとんど手を付けていないのですが、よくよく読むと「ん?」となる箇所がいくつかあったと思います。
例えば「しかし俺は今、確かにこの手で人を殺してしまったのだ。」→「自分がこれから犯してしまうであろう罪の大きさに~」となっており、いやさっきもう殺したやんか! と突っ込んだり、
「俺は立ち上がりかけて腰を浮かせたまま固まった。」→「バスが遠ざかっていく。」なんかは、いや降ろしてあげて!! と思ったり。
一番面白かったのは「俺は無意識のうちに右手を左ポケットに入れた。」という描写で、右手を左ポケットに!!??と大笑いしました。

こうして見るとAIが書く小説は、それっぽく書かれてますがよく読むと時系列や描写の前後がぐちゃぐちゃで不自然なんですよね。まだまだ成長の余地が感じられます。

この作品は私のYoutube上で朗読配信をしました。↓

よければ聞いてやってください。

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